オフィス不要論が話題になってきています。東京のオフィスの空室率が大幅に上昇しているとのニュースが続いております。それに伴い機関投資家のお客様から今後のオフィスはどうなるのかというご質問を頂くこともだんだん多くなってきました。
もちろん未来を占うことは困難ですが、オフィスは今後短期的には苦戦、コロナ終息の中で従前とは形をすこしずつ変えて回復していくだろうといわれています。
今後オフィスはどうなっていくのかについて、機関投資家のお客様にお話している内容の一部をご紹介します。
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オフィス不要論加速か。都心オフィス賃料は下落傾向、空室率がじわじわ上昇中
三鬼商事によると2021年2月の都心5区オフィス空室率が5.24%とついに5%を超え、賃料坪単価も21,662円と184円下落しました。
また、2021年3月の都心オフィス空室率は更に悪化し5.42%、賃料単価も坪あたり21,541円と下落傾向が続いています。
https://www.e-miki.com/market/tokyo/
パンデミック直前は都心オフィスの空室率は1%台とほぼ満室稼働で完全に貸し手市場であったのがコロナを機に一変しました。
特に渋谷(空室率5.55%)や港区(同6.88%)の空室率の上昇が激しく、大手町は比較すると空室率の上昇は緩やかだった模様(3.85%)です。
報道をみるかぎり余り浸透しているように感じないリモートワークですが、意外にも進んでいてこれがテナントのオフィス退去につながっていることはトレンドとしてみえてきた様です。
もしくはやはり企業の業績が痛んでいて賃料負担力が低下しているのも起因しているのでしょう。
オフィスの賃貸借契約の解除はだいたい6か月前通知が多い為、時間差でトレンドがはっきり出てきているようです。
一部の企業はオフィス売却の動き
直近で大きなニュースと言えばあの電通が汐留本社を売却検討しているというニュースです。
みずほ系のヒューリックが購入者として有力とのことですが、物件を売却した上で賃借を続けるものの、使用するスペースは縮小する模様です。
その他ではエイベックスが北米系の不動産ファンドへ本社ビルを売却したり、三陽商会も銀座のビルをレーサムに売却したりと、ひと昔前は余り出てこなかった旗艦オフィスの売却も目立ってきています。もしかしたらオフィスの潮目が変わってきているのかもしれません。
一方で直近ではJリートであるインベスコオフィスジェイリートがスターウッドキャピタルグループから敵対的買収を仕掛けられています。
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インベスコが関連会社によるオフィスリートTOB対抗策を発表
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オフィス不要論は米国も?空室率の上昇や賃料下落トレンドは米国でも
特に都心部のオフィスが苦戦
調査会社各社の数値をみると米国もオフィスの空室率が上昇しています。特に都心、例えばマンハッタンやサンフランシスコなどのオフィスが苦戦しているとのことです。
ただ一方で、コロナが収束していくにつれてオフィス勤務復帰を要請している企業いることも事実です。
賃貸期間満了が来ても長期での更新はなく、様子を見る為ごく短期での契約となったり、やはりリモートワークで会社がまわるため退去になったり、違う賃料が安い州へ移転等というトレンドです。
元々オフィスは管理が難しい物件になっていた
特に米国のオフィス事情でいえば、テナントの要求が非常に厳しくなっている中でのコロナ発生でした。
各社優秀な人材を採用するには職場の充実さが求められ、特に作業スペースだけでなく共用部の充実さもテナント誘致の為に必要でした。
例えばオフィス内ジムは当たり前で、一休みや会話を楽しむアメニティスペースや、勤務後に一杯飲むルーフトップテラスの完備など、かなり修繕や資本支出の増加がみられていた中でのコロナ発生です。
オフィスは本当に不要なのか?
オフィスがなくなるというのは極論
ではオフィスの存在がゼロになるのでしょうか?それは極論にすぎるというのは感覚的に感じると思います。ある米国の若者就業者に対するアンケートでは、オフィスで働きたいという気持ちも意外にも根強く、やはり一番理想的なのは柔軟にリモートワークとオフィスワークを選べる状態を希望している様です。
そういった意味でオフィスに出勤して業務を行うという行動パターンがなくなると結論付けるのは時期尚早だと考えられています。
オフィスの見極めはどの投資会社も難しい
2020年12月は米国の不動産取引高は回復しましたが、オフィスはショッピングセンター等やホテルと共に取引の回復が鈍く、投資家は慎重に見極めを図っていることが見て取れます。
したがってオフィスは少なくとも短期的には苦戦が続くものとみられています。
コロナ終息後のオフィスはどうなるのか?
より人と人との交流を重視したオフィス作りに
これは会社によって予想が異なるのであくまで私見の範囲を超えませんが、やはりオフィスは重視される機能が変化していくと思われます。
黙々と作業するのは家でもできる業種が増えていくと、オフィスに求められるのは人との物理的な交流になっていく可能性があります。
具体的には来客用の応接スペースの拡充、チームメイトとの積極的な交流のためのおしゃれな会議スペース、コロナ前からスタンダードとなりつつあったジムやバー、ルーフトップなどのアメニティスペースの充実。こういったものが求められるかもしれません。
逆にこういったものを用意できないオフィススペースは縮小する可能性があります。
オフィスの地域細分化が始まる可能性
本社機能は都心部に残しながらも、通勤に時間がかかる人は特にサテライトオフィスのニーズが高まる可能性があります。
米国も空室率の上昇が都心の方が激しく、郊外が比較的マシだったのはこの潜在的ニーズを示している可能性があります。
また来うる危機への対応も必須に
今回のコロナで従前余り想定されなかった感染対応は必須になるでしょう。
テロのリスクがある米国はセキュリティは従前からしっかりしてますが、やはり感染対策をとっていたオフィスはほとんどなかったと思います。
今回のパンデミックでしっかりとした感染対策の手順(プロトコル)とよりハード面での対応が必須になるでしょう。これはコスト増につながり短期的には不動産価値に影響がありますが、長期的に必要なコスト/投資です。
オフィス投資の見通しまとめ
この3点に集約されるかと思います。
その他の物件状況については↓をご参照ください。
コロナで暴落?世界の不動産市況について最新の情報を解説します。