物流系リートが好調な状況が続いています。コロナ発生でリート全体は大幅な価格下落となりましたが、物流系リートはコロナ直前のピークを上回るもの銘柄もありました。
物流施設全体のファンダメンタルズは非常に好調であることが背景ですがなぜ好調なのか、その背景について詳しく解説したいと思います。
Contents
物流系リート:物流施設投資とは?
物流施設はもはや「倉庫」ではなく「最先端IT施設」
物流施設とは専ら企業のモノを配送する為に使用される施設です。単純に言ってしまうと”倉庫”になりますがいわゆる物流センターと呼ばれる施設は「6大機能」と呼ばれる機能を担っています。
また、物流施設は大きく分けて①TC(トランスファーセンター)、②DC(ディストリビューションセンター)、PDC(プロセスディストリビューションセンター)などに分けられます。物流施設の種類によっては6大機能の全ての機能を有しているわけではありません。
物流センターの「6大機能」
- 輸配送
- 保管
- 荷役(積み下ろしから商品出荷までの機能(荷揃えから運搬、集荷(ピッキングなど)他)
- 包装
- 流通加工
- 情報管理
物流施設はひと昔前は非常に地味な存在でした。しかしながらアマゾンをはじめとしたEコマースの浸透により、より先進的な記述が詰まった”最先端IT施設”と言っても過言ではありません。
各社はどうすれば商品を消費者に届けるリードタイムを短縮できるか、技術のしのぎを削っています。物流施設はその技術革新についていけるスペックの建物に年々進化してきました。
したがって、この倉庫という地味なイメージは少なくとも投資家の中では過去のものといっていいでしょう。
物流施設は機関投資家の投資対象資産として近年洗練化してきた
テナントであるEコマースの担い手からの要求により物流施設は劇的に進化してきました。外資系物流投資会社がこのテナントニーズに応えるために作り上げてきたスペックは”先進的物流施設”と呼ばれ、今では物流リートの保有物件でもスタンダードになっています。
このスペックで作り上げることにより、施設内で最も効率的な物流システムを構築する最低限を満たすということになります。
また、このように高度なスペックでしっかりとテナントを維持できるということで過去数年間にわたり機関投資家からの資金が大幅に流入しており、物流施設の価格を押し上げています。
先進的物流施設の主なスペック
- 延べ床面積10,000平米以上
- 床荷重1.5トン/平米以上
- 有効天井高5.5メートル以上
- 柱間隔10メートル以上
- トラックバース、ランプウェイの完備
- 免震構造
- オフィスやコンビニ等充実した従業員のアメニティスペース
- 環境への配慮など
コロナ禍でますます業績を上げる物流施設
物流系リートが価格急回復。トレンドはグローバルレベルで
物流施設の好調は日本に限ったことではなく、グローバルなトレンドとなっています。特に動きが顕著なのはアメリカです。そもそも1人あたり実店舗数が多かったアメリカは大きな構造変化の過程にあります。
物流施設の業績が好調な背景
物流施設が好調な背景は明確です。
物流施設が好調な背景
- 数年前よりオンラインショッピングの浸透でニーズが年々増加
- コロナの発生によりオンラインショッピングがより浸透
- カネ余りの状況が続くなか、上記の需給状態により機関投資家の資金が大量に流入
数年前よりオンラインショッピングの浸透でニーズが年々増加
元々オンラインショッピングの浸透により、商品を消費者に届けるインフラ需要が年々増加しており、それに伴って物流施設のパフォーマンスは良好な状況がここ数年続いていました。
物流施設の好調は日本に限ったことではなく、グローバルなトレンドとなっています。特に動きが顕著なのはアメリカです。そもそも1人あたり実店舗数が多かったアメリカは大きな構造変化の過程にあります。
コロナの発生によりオンラインショッピングがより浸透
象徴的なのはバーニーズニューヨークやJCペニーといった老舗の百貨店の倒産です。これはもはや若者を中心として特に衣料品を実店舗で購入することは無く、全てオンラインで購入しているという現状です。
個人的には衣服は直接見て買いたいのですが、若者は実店舗で簡単にサイズ感だけ確認してネットで購入という消費行動の一般化が進んでおり、今回のコロナで更にその傾向が顕著になった結果、消費者にものを届ける物流施設が絶好調で商業施設が大苦戦といった構図になっています。
カネ余りの状況が続くなか、上記の需給状態により機関投資家の資金が大量に流入
コロナの中で例えばFRBやECB,日銀がお金をばらまいた結果、行き場を失った滞留資金のほとんどが手っ取り早い株式や債券に流れていき資産価格が爆騰しました。
当然その一部は不動産へ流れていったのですが、オフィス、ショッピングモール等の商業施設、ホテル等の物件種類はコロナにより見通しが不透明で流石に投資できません。
そこで実質的な受け皿となっているのが物流施設です。
リートだけでなく、物流施設の物件そのものへの投資が集中している状況です。
不動産の運用担当者もテーマとして取り扱いやすく、機関投資家もストーリーとして投資しやすいという状況で、コロナのピークを除けば大きくお金が流入し価格を押し上げています。
物流施設今後の見通し
物流施設のファンダメンタルズは好調が続くといわれている
物流施設への需要は今も底堅く、今後も賃料は伸びていくといわれています。やはりまだ多くの国々が、オンラインショッピングの浸透率に伸びしろがあるからです。
物流系リートの価格面は高い水準まで来ているとの考え方も
一方で投資家による需要が強すぎて価格が高止まりしているという意見もあります。
賃料の伸びについても言い方を変えると借主であるアマゾン等の企業や、3PL等の配送業者がコスト構造上どれだけ賃料を負担できるかという限界値があり、一部の地域ではかなり高い水準まできているのではないかともいわれています。
いくら最先端といっても物流はコストをいかに抑えるかというのがテーマであり、物流施設を借りることそのものが利益を生むわけではいというのは構造上の限界を表しています。
特にそろそろ注意が必要なのではと言われているのがテナントが1社だけのBTS(Build to Suit)と呼ばれるタイプのものです。
これは物件開発当初からその特定のテナントが要求するスペックに合わせてオーダーメイド作られる施設になります。
もちろん、そのリスクを軽減する為に非常に貸し手有利な賃貸契約を締結する努力をしますが、万が一退去してしまった場合は本当に代替でテナントが入るのかが心配される物件もあります。
なぜならオーダーメイドが特殊すぎると中々他のテナントに合わなくなるリスクがあるからです。
今はイケイケどんどんでも市場が飽和状態になり、借り手の信用が弱くなってくるとこのようなリスクが顕在化する可能性があります。
物流施設に投資するには物流系リートへの投資が現実的
現実的なのは物流系リートへの投資
個人投資家の立場で物流施設そのものに投資をするのは中々難しいと思います。一件あたり数十億から100憶を優に超える投資になりますし、物件そのものや賃貸の管理を素人で行うのは現実的でないからです。
したがってタイトル通り個人が物流施設に投資したい場合はリートへの投資が現実的な選択肢です。
投資可能な物流系Jリート一覧
現在上場している物流系リートは以下の通りです。
なお、一部のリートはいわゆる物流施設だけではなく、資産の一部を工場や研究施設、データセンター等を含みますのでご注意ください。研究施設やデータセンターはそれぞれ別途注目されている物件種類ではあります。
銘柄名 | コード | スポンサー |
伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人 | 3493 | 伊藤忠商事 |
産業ファンド投資法人 | 3249 | 三菱商事、UBS |
日本プロロジスリート投資法人 | 3283 | プロロジスグループ |
日本ロジスティクスファンド投資法人 | 8967 | 三井物産 |
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人 | 3471 | 三井不動産 |
三菱地所物流リート投資法人 | 3481 | 三菱地所 |
ラサールロジポート投資法人 | 3466 | ラサールグループ |
CREロジスティクスファンド投資法人 | 3487 | CRE |
GLP投資法人 | 3281 | GLP |
SOSiLA物流リート投資法人 | 2979 | 住友商事 |
特におすすめのリートを選ぶのは難しいですが、一般的に外資系で物流施設投資を専業としていたプロロジスとGLPは先進的な物流施設を日本に持ってきたといっても過言ではないので、その道では一日の長があります。だからといって他が著しく劣っているというわけでもありません。
特に気になるリートがあれば、ポートフォリオをHPで確認することができるので、築年が新しいもので構成されているか、立地は物流施設上好ましいところにあるか、稼働率は高いか等をチェックした上で利回りと価格感を見ながら投資していくのがいいのかなと思います。
築年が新しくないと近代的な物件でない場合テナント付けが難しい場合があります。今の稼働率がよくても一旦テナントが抜けてしまうとまた賃貸するのに苦労する可能性がありますので注意が必要です。
単純に利回りが高いのがいいわけではありません。結局借入比率を高くして見かけの利回りが高いだけかもしれませんのでそのあたりも見ていくことをお勧め致します。
ただし、物流リートの更なる大幅な値上がりは難しいか…
最近の物流系リートの価格推移を見ていると去年の8月から10月あたりはかなり上昇しており、配当利回りも3%を切る銘柄が多くありました。
東証リート指数のピークである2200程度はまだ回復していない中、物流系リートは過去最高値を更新していました。
直近(2021年3月)の配当利回りは3%前半と若干落ち着いていますが既にほかの物件リートの配当利回りを下回っています。
配当利回りがこれ以上大幅に下がる余地(つまり価格が上昇する)は少ないかもしれません。金利が上がった場合もリスク要因になります。
ファンダメンタルズは良好なので物件の賃料成長は見込める(内部成長と言います)可能性があり、その分価格が上昇する余地はあるかもしれませんが、利回り圧縮による大幅な価格上昇は難しいかもです。
近年物件取得も聞くところによると競争が激しく相当苦労している様で、既存の利回りよりいい利回り価格で購入すること(外部成長と言います)はほぼ不可能だいう状況の様です。
もしかしたら、あらかじめ銘柄にあてを付けて、なにかファンダメンタルズ以外の要因で少し下がったりした場合に少しずつ買い足していくといった方が安全かもしれません。
コロナで暴落?世界の不動産市況について最新の情報を解説します。
注)投資にはリスクがあり、損失が発生する可能性があります。実際の運用は必ずご自身の判断でおこなってください。当ブログは特定の金融商品をお勧め、勧誘することはありません。