インベスコオフィスジェイリートのTOBについて、買収を表明しているスターウッドキャピタルグループはTOB期間の延長と、本日2021年6月1日にTOB価格の引上げを発表しました。
くしくもTOB価格はインベスコの関連会社によるTOB価格と同額です。
スターウッドキャピタルグループの狙いはなんなのでしょうか?考察していきたいと思います。
かなりの長編となりましたが今までの記事は↓の通りです。重複も多いのでご興味があれば斜め読みしてください。
スターウッドがインベスコオフィスをTOB【REIT敵対的買収】
インベスコオフィスJリートのスターウッドに対する第一手を発表
インベスコオフィスリートとスターウッドキャピタルそれぞれに動き
インベスコオフィスJリートが正式にTOB反対を表明
スターウッドキャピタルがインベスコオフィスTOB価格引き上げ
インベスコが関連会社によるオフィスリートTOB対抗策を発表
Contents
スターウッドキャピタルグループ、インベスコの概要
スターウッドキャピタルグループ、インベスコはともに米国を本拠地とした不動産ファンドを運用する投資会社です。
インベスコはグループとしては不動産だけでなく株式や債券等様々な資産クラスを運用しています。
不動産ファンドについての解説は以下をご覧ください↓
外資系不動産ファンドとは?給与水準など詳しく解説します
不動産ファンドの具体的な仕事内容を解説
今回、インベスコが運用しているJリート「インベスコオフィスジェイリート」がスターウッドキャピタルグループによる敵対的買収を受けており、非常に激しい戦いがくりひろげられています。
スターウッドによるインベスコオフィスTOB価格引き上げと期限延長
スターウッドによるインベスコオフィスジェイリートTOBについて、大きく3つの変更点がありました。
TOB変更点
- TOB期限を5月24日から6月15日に変更
- TOB価格を一口21750円から22500円に引き上げ
- TOB買付の下限投資口数を50%+一口に引下げ
最大のナゾはTOB価格がインベスコ関連会社の救済TOB価格と同額ということ
正直一番理由が読めないのはTOB価格です。
21750円から22500円に引き上げたのですが、これはインベスコが関連会社をして企図しているTOB価格と同額です。
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インベスコが関連会社によるオフィスリートTOB対抗策を発表
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ほんの少し高い価格であればまだ理解できるのですが同額というのはどのように解釈したらよいのか、正直難しいです。
TOB買収口数の引き下げは確度を少しでも上げる措置かもしれませんが、であればTOB価格は少なくともインベスコサイドより高くする必要があります。
インベスコオフィスTOB価格の水準感おさらい
スターウッドのTOB価格21750円は逆算するとNOI利回りで4.16%でした。引上げ後はインベスコTOB買付予定と同じなので4.07%です。
これはマーケット賃料に直して、かつ稼働率99.2%の前提ですので、実際には賃料はもう少し低く、6か月後には稼働率は90%前半まで低下する見通しなのであくまで参考値です。
項目 | 数値 | 備考 |
物件稼働率 | 99.2% | |
物件取得価格合計 | 225,871 | |
取得価格NOI利回り | 5.18% | |
物件鑑定評価 | 274,131 | |
鑑定評価NOI利回り | 4.27% | 取得価格NOI利回りを基に試算 |
マーケット賃料引き直し後NOI | 12,803 | NOI×(111.7%×80%) |
マーケット賃料引き直し後評価額 | 299,790 | |
想定NOI利回り | 4.07% | |
想定NOI利回りベース評価額 | 314,649 |
各TOB価格に基づいた試算を以下の図にまとめました。NOI利回りベースで4%だと一投資口あたり23116円ですが、これはマーケット賃料と稼働率99.2%の前提です。
利回りだけ見るともう少し頑張れそうな気がしなくもないですが、スターウッドがインベスコ側とTOB価格が並んだという意味ではプライシング的にここらが上限という意味かもしれません。
スターウッドにはもう少し根性見せてほしかったところではありますが、ここらが限界とみているのか、更なる値上げをギリギリのタイミングで画策しているのでしょうか?
前に書いた通りですが、コア不動産ですと海外不動産でもインカムリターンで4%程度は要求されるので、レバレッジを考慮してもここから大幅に上げるのは正当化に少し苦労することになります。
簿価 | 鑑定評価 | マーケット賃料 | スターウッドTOB(NOI4.16%) | インベスコグループTOB(NOI4.07%) | NOI利回り4% | |
流動資産 | 23,781 | 23,781 | 23,781 | 23,781 | 23,781 | 23,781 |
有形固定資産 | 230,795 | 274,131 | 299,790 | 308,049 | 314,649 | 320,066 |
その他固定資産 | 1,348 | 1,348 | 1,348 | 1,348 | 1,348 | 1,348 |
総資産 | 255,926 | 299,260 | 324,919 | 333,178 | 339,778 | 345,195 |
有利子負債 | 126,280 | 126,280 | 126,280 | 126,280 | 126,280 | 126,280 |
その他負債 | 15,496 | 15,496 | 15,496 | 15,496 | 15,496 | 15,496 |
純資産 | 114,150 | 157,484 | 183,143 | 191,402 | 198,002 | 203,419 |
発行口数 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 |
一口あたりNAV | 12,971 | 17,896 | 20,811 | 21,750 | 22,500 | 23,116 |
どうなる?インベスコオフィスJリートのTOB
スターウッドキャピタルはインベスコオフィスTOBを実質諦めた?TOB価格をインベスコ側と同額にしたという意図を読み取ると、一番簡単な解釈の仕方は「TOBを実質諦めた」ということでしょうか。
下限の引き下げを行い、あわよくばTOBの成立を狙うものの、これ以上の経済リスクを負わない、という意思表示かもしれません。
あと考えられることとしてはTOB期限の土壇場で価格の引上げを行う奇襲攻撃くらいですが、ちょっと今のところ分からないというのが正直なところです。
とりあえず成り行きを注意深く見ていきたいと思っています。
スターウッドTOB結果が出ましたので記事を追加しました↓
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インベスコオフィス、スターウッドによるTOBは失敗。投資口価格への影響は?
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