不動産投資知識

不動産投資に失敗したときはどうなる?【対応を説明します】

不動産投資には当然リスクがあり、いかにリスクを最小限にして投資するかが重要になります。ただ、どうしても失敗したときは損失を受け入れ、傷が浅いうちに撤退することも大事です。どのようなタイミングでどう損切りをするべきかご説明していきます。

ありがたいことに個人では不動産投資の失敗はありませんが仕事で失敗はいくつも見ています。すべからく割り切って損切りしているというのが特徴です。ここは私情を捨てて合理的になるのが重要なのかもしれません。。。

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不動産投資に失敗したときはどうなる?金額が大きい分リスクも大きい

余り想像したくない問題ですが、投資にはリスクがつきものであり、失敗する可能性はあります。不動産投資は非常に高額な投資です。大事なのは投資時点でこの投資がどれくらいの損失となる可能性があるのか、損失が発生しそうな場合はどうするか(損切ラインの設定)を深く考える必要があります。不動産の大きな欠点は上場株式のような流動性がないので一日で損切りということはできません。言わば”敗戦処理”を何か月、ときに何年もかけて行うことを強いられる可能性があり、覚悟が必要です。

損失発生が起こりそうな状況は個別物件に起因するものと市況全体の影響が考えられます。前者は例えば保有中に事故、事件が起こってしまったり、保険ではカバーできない何か大きな欠陥が見つかったりしたときや、そもそも購入価格を間違って高く買ってしまった場合などが考えられます。これらはある程度は自分で防ぐことは可能です。後者は日本全体の経済環境が大幅に悪化したり物件地域で何か大きなマイナスとなることがあった時などです。これについては物件レベルではどうしようもなくコントロールは効きません。

損失可能性を投資時点で見極めたり、価値下落リスクを避ける措置はまた別途ご紹介しますが、価値の下落、損失がほぼ避けられないときはどのような対応の仕方があるか、ご紹介したいと思います。

借入れがあるかないかで対応が変わります

不動産投資に失敗してしまった場合、その対応や取りうる選択肢は、借入れの有無で大きく変わってきます。借入れなしの全額自己資金でも投資の場合、比較的選択肢があります(メンタルはきついです)。借入れがある場合は非常に慎重に話を進める必要があります。

全額自己資金での不動産投資の場合:ある程度自分でコントロールできます

物件を購入する際、融資を受けずに投資した場合は(損失額は別にして)時間的にも色々とある程度選択肢があります。例えば1憶円で購入した不動産が5,000万円まで市場価値が下がってしまった場合を例に見てみましょう。

収支がプラスの場合は傷を浅くする努力は可能

価値が下がってしまった物件でも、賃料からコストを差し引いたときにプラスになればいわゆるインカムリターンである程度損失のカバーをすることが可能です。ただし、これは①大きな修繕など多額の追加コストがかかるリスクが少ないこと、②収支のプラスが市場価値の更なる下落と経年による下落の見込みペースを上回っていることが条件になります。

①はある程度の予想がつきます例えば1億円で購入した物件の収支が年間500万円で、仮に市況悪化で価値が5,000万円まで下がったとしても500万円の収支は変わらなかった場合、単純計算で10年持てば損失を全額カバーすることができます。ただ、大前提として特別な修繕がかからないことと不動産価値が5,000万円以下にならないことが条件となります。すなわち②の条件です。

②は将来については誰も分かりませんので判断が難しいでしょう。経年がたてば一般的には日本の不動産は価値が下がるといわれています。市況について、一つの見方としては金利状況に着目するのが一つの方法です。不動産価格は金利に敏感なので今後金利が上がるペースが収入が上がるペースより高いと思えば不動産価格は下落します。金利が上がると不動産価格は理論的に下落圧力がかかると思ってください(単純なロジックではないのでこちらについてはまた別途お話したいと思います)。そこにある程度安定性を見出せると判断できれば、10年持つことは決断できなくても向こう2,3年我慢して保有して少しでも損失をカバーした後に売却して損切りという判断も出てくるかと思います。

価値が維持できない、更に追加コストがかかる見込みのものはあきらめも大事

しんどいのは価値の維持が見込めないものに追加投資が必要な時です。例えば1憶円投資を行い、価値が5,000万円まで下落したときに、例えば1,000万円の何らかの修繕が必要になり追加投資を強いられる場合です。加えて仮にこの1,000万円を投下しても価値が上がるわけでは無い場合です。5,000万円の含み損がさらに増えて6,000万円になってしまいます。こういった場合は思い切って損切りすることが必要になります。すべて自己資金で投資をしていた場合は傷口を広げないためにも撤退するというのは非常に重要な判断となります。仕事上不動産ファンド運用のプロの所作を見ていますが、やはり追加投資に対るリターンが見込めないと判断されたものは冷静に損切りしています。プロでも見通しを間違えて投資に失敗するときもあるのでなおさら失敗した時はあっさりと撤退することは重要です。

結論:自己資金での不動産投資に失敗したときに損切するかどうかは自分次第

よって結論としては身もふたもないものになってしまいますが自分の中でもういいか、と思えれば売ってしまって一部資金を回収して次に充てることができます。我慢して持っておくということであれば上記の様に多額な追加コストがかからず、更なる価格下落の見込みが少ないと自分が判断すればしばらく保有を続けて市場の回復を待つということもできます。

いずれにしろ重要なポイントは投資した1憶円が理屈上ゼロになることはありますが、マイナスになることは無いということです(多額の追加コストがかかった場合を除く)。これは悔しい気持ちににはなりますが、借入れをして投資をして失敗した場合とメンタルが全然違います。

借入れを利用して不動産投資に失敗した場合、対応方法は返済状況次第

自己資金で投資した場合と異なり借入で投資をした場合はその返済の余裕さで選択肢が全く変わってきます。個人では通常借入をして不動産に投資をするのがほとんどだと思いますのでなるべく詳しく見ていきたいと思います。

返済に余裕がある収支であれば、不動産運用の選択肢は自己資金とほぼ同じ

仮に収支がしっかりと出ており、返済に問題がなければ後はどのタイミングで、どの様に損切りを行うかは選択肢があります。ただ、例えば1憶円の物件で不動産価値が5,000万円となった場合、1憶円全額自己資金で投資した場合は差引き5,000万円(1憶円-5,000万円)手元に残りますが、1憶円のうち5,000万円を借り入れて投資をし、その後不動産価値が5,000万円に下落してしまった場合、売却したら手元に資金は残らず全額パーになってしまいます。これがレバレッジの怖いところです。更に1憶円の物件を7,000万円借入れて投資し、5,000万円まで下落した場合は売却しても借金が残ってしまい売るに売れません。なので投資検討時に安易にフルレバレッジで投資するリスクはしっかり理解された方がいいと思います。

したがって、市場価値が借金を上回っている場合や、返済状況に問題が無ければしばらく収入で損失をカバーしてもいいですし、一旦見切りを付けて損切りするということもできるかと思います。不動産投資で損失が出たこと自体はプラス評価にはなりませんが、そこで一旦完済した履歴をつけておくことは対金融機関にとってまた再度融資をお願いする際は決してマイナスには働かないと思います。

不動産投資失敗での最悪の状況とは・・・?まずは金融機関への対応が重要

不動産投資における最悪の状況とは、①不動産価値が購入時よりも大幅に下落している②不動産価値が借入残高を大きく下回ってしまっている③現在の収支では返済額をねん出できない、この3点が同時に起こっている状態です。

借金には通常「期限の利益」がある

余り聞きなれない言葉ですが、民法上、借入れを行った人は、借入れ時に、借り入れたお金には「期限の利益」が与えられています。これは契約違反が無い限りにおいては、契約上定められた期日まで借入金を返済することが求められないことを意味します。この契約違反に該当する事項は色々ありますが一番大事なのは”借入契約書(金銭消費貸借契約書といいます)”に定められている期中の返済額をきっちり支払うことです。契約通り支払われない限り、資金の貸主である金融機関は、「期限の利益」を”喪失”させ今残っている借金を全額今スグ返済しなさいと求めることができます。逆にいうと借金を返済している限りは金融機関は一括返済を求めることはできず、首の皮一枚つながっている状況になります。ただ、例えば返済不足分を本業の給与から補填しているような状況は非常にまずいです。すぐにでも損切りを検討すべきだと思います。

「期限の利益」を”喪失”するとどうなる?

返済ができない場合、金融機関は担保となっている不動産を強制的に処分して資金を回収できることになります。借入人と歩調を合わせて市場での資産売却をしていく方法を”任意売却(略して任売)”といいますがこのような秩序だった借入の整理を行うことは金融機関にとっても借入人にとっても好ましいといわれています。一方で借入人と協力体制が築けず強制的に処分する場合は裁判所を通じた”競売”と言います。その他賃料収入がある場合はその賃料収入を差し押さえて借入金に充当することもできます。最近競売の価格も上がっているので一概には言えませんが競売で処分された場合は任売で処分するよりも安い金額で処分することを強いられる可能性があります。そうなると借金を大きく下回る金額で不動産を売られ、多額の借金が残ってしまう可能性があります。

対応策①:まずは金融機関に相談を。場合によっては弁護士に相談を

①現在の不動産価格が借入額より低くなってしまっていて、②返済が厳しくて続けることができない場合はまずは金融機関に相談すべきだと考えます。金融機関は過去の不良債権に対する処理の経緯や金融円滑化法の流れから、特に借入人が不義理をしなければしっかりと相談に乗ることが義務付けられています。その中で例えば返済についてのリスケジュールを一度相談してみましょう。返済のリスケジュール(リスケ)とは例えば一定期間の間は利息のみの返済にしてもらったり、返済期限を延長してもらうことを指します。これに対応してもらった場合次の融資は難しくなりますが精神的には非常に楽になるはずです。

ただし相談前には書籍やネット等できっちりと勉強をしたうえで臨みましょう。場合によっては弁護士の無料相談などを活用してもいいので、とにかく知識ゼロで相談することは避けてください。

リスケ相談については、金融機関も慈善事業ではないのできっちりとした経済合理性を説明しなければ流石に相手にしてくれません。まずどのような要因で苦境に立ちいってしまったのか、現在の資産、収支状況を詳しく説明、そしてどのようにしてそこから返済を正常化、もしくは資産を処分して借金を返済していくかを示していく必要があります。

深刻な状態にある場合、どのように金融機関と交渉するかについてはまた別途詳しく書いていきたいと思います。

金融機関への誠意の無い対応は身を滅ぼす可能性があります

絶望的な状況下ではつい投げやりになりがちです。手がないときにすべてあきらめて金融機関への対応も不誠実になると金融機関も容赦なく資産の回収を図ります。文字通りすべてを失ってしまうこともあります。メンタル的には本当につらいと思いますが、ここは真摯に対応し、少しでも傷口を小さくする努力が不可欠です。

安易に素性の分からない悪徳コンサルタントに注意

絶対に避けたいのは追い詰められた上に悪徳コンサルタントに相談して莫大で不当なコンサルタント料を支払うことです。このようなコンサルタントに明確な免許はいらず、有象無象の世界です。なのでまずは自身でかなりの程度勉強することが重要です。弁護士に相談する際も何もトライせずに破産手続に入ることは避けた方がいいと個人的には思います。

不動産投資の失敗を一人で抱え込まないこと!

不動産投資に失敗した場合、傷は大きくふさぎ込んでしまいます。でも、決して命までもが奪われるわけではありません。信頼できる家族に相談することも重要です。何よりも最後まで投げやりにならずに対処することが重要ですので、問題が起こってから対応を考えるのではなく、最悪の事態になった時にどうすべきかの知識武装をしていくことをお勧め致します。この記事がその一助になれば幸いです。

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