スターウッドキャピタルグループによるインベスコオフィスジェイリートの敵対的TOBで攻防が繰り広げられていますが、ついにスポンサーであるインベスコグループによるTOB(公開買付)が発表されました。これでスターウッドのTOB成立は少し難しくなった様に見えますが今後どうなるのでしょうか?
かなりの長編となりましたが今までの記事は↓の通りです
スターウッドがインベスコオフィスをTOB【REIT敵対的買収】
インベスコオフィスJリートのスターウッドに対する第一手を発表
インベスコオフィスリートとスターウッドキャピタルそれぞれに動き
インベスコオフィスJリートが正式にTOB反対を表明
スターウッドキャピタルがインベスコオフィスTOB価格引き上げ
Contents
スターウッドキャピタルグループ、インベスコの概要
スターウッドキャピタルグループ、インベスコはともに米国を本拠地とした不動産ファンドを運用する投資会社です。
インベスコはグループとしては不動産だけでなく株式や債券等様々な資産クラスを運用しています。
不動産ファンドについての解説は以下をご覧ください↓
外資系不動産ファンドとは?給与水準など詳しく解説します
不動産ファンドの具体的な仕事内容を解説
今回、インベスコが運用しているJリート「インベスコオフィスジェイリート」がスターウッドキャピタルグループによる敵対的買収を受けており、非常に激しい戦いがくりひろげられています。
インベスコのグループ会社が更に価格を引き上げてTOBを実施する意向
インベスコのグループ会社であるIRE(Cayman) Limitedは以下の通りインベスコオフィスJリートの投資口の公開買付を行う意向を示しています。
ポイント
- 投資口全てを対象とした公開買付
- 買い付け価格は一投資口あたり22500円(スターウッド買付価格は21750円)
- 共同投資家およびインベスコが運用するファンドおよびセパレートアカウントビークルによる投資、日系メガによる融資を検討
- 公開買付開始から30営業日
インベスコの対抗策としてはある意味順当な手法
私は今回のインベスコオフィスリート敵対的TOBが始まった際にインベスコには主に以下の3つの対応が想定されると書きました。
スターウッドがインベスコオフィスをTOB【REIT敵対的買収】
インベスコ対応策一覧
- 反対表明だけだして放置
- 買取額増額を提示してTOBに賛成表明する
- 自社グループもしくは他社資本(ホワイトナイト)を活用してTOB、非上場化
結果としてはまさに3点目にあたります。公開買付にかかるプレスリリースにある通り、インベスコ自身も資金を投入しますが大部分はインベスコが運用している不動産ファンド、共同投資およびセパレートアカウントからの出資を取り付けたことになります。
つまり実質的に自社グループと他社資本(ホワイトナイト)を活用したTOBになるわけです。インベスコが運用している以上彼らの意向が強く働きますが。。。
3つあるうちのある意味一番の正攻法といえるでしょう。せっかくだったらウルトラCを見てみたかったのですが、制度上の制約等もあるのでしょう。まあ、見ていて十分面白いです。
インベスコグループによるTOB価格は割安なのか?
スターウッドのTOB価格21750円は逆算するとNOI利回りで4.16%でした。
これはマーケット賃料に直して、かつ稼働率99.2%の前提ですので、実際には賃料はもう少し低く、6か月後には稼働率は90%前半まで低下する見通しなのであくまで参考値です。
項目 | 数値 | 備考 |
物件稼働率 | 99.2% | |
物件取得価格合計 | 225,871 | |
取得価格NOI利回り | 5.18% | |
物件鑑定評価 | 274,131 | |
鑑定評価NOI利回り | 4.27% | 取得価格NOI利回りを基に試算 |
マーケット賃料引き直し後NOI | 12,803 | NOI×(111.7%×80%) |
マーケット賃料引き直し後評価額 | 299,790 | |
想定NOI利回り | 4.07% | |
想定NOI利回りベース評価額 | 314,649 |
各TOB価格に基づいた試算を以下の図にまとめました。NOI利回りベースで4%だと一投資口あたり23116円ですが、これはマーケット賃料と稼働率99.2%の前提です。
利回りだけ見るともう少し頑張れそうな気がしなくもないですが、一般的に大きな投資のアップサイドが想定されない冷静に経済合理性で考えるとインベスコのTOB価格22500円というのは上限に近い気がします。
コア不動産ですと海外不動産でもインカムリターンで4%程度は要求されるので、レバレッジを考慮してもここから大幅に上げるのは正当化に少し苦労することになります。
簿価 | 鑑定評価 | マーケット賃料 | スターウッドTOB(NOI4.16%) | インベスコグループTOB(NOI4.07%) | NOI利回り4% | |
流動資産 | 23,781 | 23,781 | 23,781 | 23,781 | 23,781 | 23,781 |
有形固定資産 | 230,795 | 274,131 | 299,790 | 308,049 | 314,649 | 320,066 |
その他固定資産 | 1,348 | 1,348 | 1,348 | 1,348 | 1,348 | 1,348 |
総資産 | 255,926 | 299,260 | 324,919 | 333,178 | 339,778 | 345,195 |
有利子負債 | 126,280 | 126,280 | 126,280 | 126,280 | 126,280 | 126,280 |
その他負債 | 15,496 | 15,496 | 15,496 | 15,496 | 15,496 | 15,496 |
純資産 | 114,150 | 157,484 | 183,143 | 191,402 | 198,002 | 203,419 |
発行口数 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 |
一口あたりNAV | 12,971 | 17,896 | 20,811 | 21,750 | 22,500 | 23,116 |
インベスコオフィスJリートの敵対TOB今後はどうなるのか
スターウッドのTOB期限が5月24日と迫ってきていた中、インベスコも決定打に近い対抗策を出してきました。
インデックスファンドによる持分25%以上や、既にインベスコグループで投資口の7%以上保有されている状況をみると旗色が悪いようにも見えますが、今後どうなるのでしょうか?
インベスコオフィスTOB(公開買付)価格吊り上げの買収合戦になるかどうか
インベスコグループによるTOBによってスターウッドは今のままでは合理的に考えて敵対的買収は成立しないでしょう。
従ってTOB価格を吊り上げるかどうかにかかっています。個人的にはもういっちょ吊り上げて盛り上げてほしいところです。
価格は説明できる上限に近づいてはいます。ただ、米国企業も合理的に見えて最後は意地の張り合いみたいな展開は良くあります。
数字は後付けでもっともらしい理屈でなんとでもなります笑。
担当者も投資をしないとリターンを得るチャンスもゼロですし、今までの作業がパーになるのでがぜんディール(案件)を成立させるインセンティブがあります。
従って、もしかしたらスターウッドから更なる価格の吊り上げはあるかもしれません。楽しみに待ちたいと思います。
明日、もしくは週明けに動きがあることを期待します。
インベスコオフィスリートTOB対抗策ひとつの疑問
余談ですが、今回のTOBでインベスコがスターウッドに対して主張していた強圧性で既存投資主への毀損になる話うんぬんはインベスコがスクイーズアウトする意向を示している時点で完全ブーメランでかえってきますよね?
まあそこは茶番なのでもはや誰も気にしないと思いますが笑。
【2021.6.1追記】やっとスターウッドキャピタルがTOB価格を引き上げたので記事追加します。
スターウッドキャピタルがインベスコオフィスTOB価格引上げ
【2021.6.18追記】結局スターウッドによるTOBは不成立、関連会社によるTOBが開始する様です。
-
インベスコオフィスJリート買収合戦は関係会社による非公開化で決着か【しなくても勝利】
続きを見る