直近米国そしてほんの少しですが日本でも起きている金利上昇ですが不動産価格に影響を与えるのでは?といわれています。不動産と金利の関係、そして直近の金利上昇が不動産価格にどう影響していく可能性があるのか解説していきたいと思います。
今般の金利上昇で不動産価格にどう影響があるのか、機関投資家のお客様から質問を受けるのが仕事でも出てきましたのでここで実際に回答している内容をご紹介していきたいと思います。
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そもそも金利ってなに?
通常お金を借入れる場合はその元本とともに利息を支払います。例えば100万円借りた場合、その借入100万円を返して終わりではなく、利息として例えば5万円を加えて105万円貸してくれたところに支払います。これは借りる人が個人であろうが、会社であろうが、それこそ国であろうが一緒です。金利というのはこの借入を行った場合、利息は元本に対して何パーセントかということを表します。
金融の世界で金利というと、たいていの場合は国債の利回りを指します。通常の場合この金利というのは返してもらえる可能性が低い場合は高くなり、より安全と見られれば低くなります。それに加えて先進国の国債の金利というのは景気の健康度を表しており景気がいい状況の時は金利は少しずつ上昇していきます。一方で景気に黄色信号がかかった場合は金利が低下します。何か逆のことを言っている様に聞こえると思いますが、今は中央金融機関(日銀やFRB)の行動がこの国債金利に大きな影響を与えている状況です。
どういう意味かというと、景気がいい場合は過熱を抑えるために金利が高くなる様にゆるくブレーキを掛けます。一方で景気がいまいちとなった場合は金利が低くなる様に誘導してお金が回りやすくなる様に誘導します。国債の金利が低くなるとその他の融資の金利も安くなり企業がお金を借りやすくなるので世の中にお金が回りやすくなるためです。
本来は国の成熟度や財政状態、はたまた投資家行動により金利水準というのは変動します。ただ今の状況は米国、欧州、日本は全て超低金利政策(+スーパー量的緩和)をとっており、金利上昇というのはある程度警戒されながらも正直去年はそれどころではなかったというのが実態だと思います。
その様な中で株価がどんどん上昇し、ワクチン等によりコロナの出口が意識され始めると経済回復の見通しがたってきたので金利がどんどん上昇してきているという状況です。
なぜ金利が不動産価格に影響を与えるのか?
金利上昇は不動産利回りの上昇要因になる
金利が上昇すると不動産価格にどう影響がでてくるのか、一番わかりやすいのは以下の数式です。
不動産価格 = 賃料収入 ÷ 不動産利回り
これは不動産価格を計算する上で最も基本となる数式です。不動産利回りはよく国債(10年もの)の利回りと比較されます。国債と比べてどれくらいの上乗せ(スプレッド)をするけというのが不動産利回りの基本的な考え方です。
利回りが上昇すれば不動産価格は下がるということが式を見てお分かりになるかと思います。不動産利回りの基となる国債が上昇すれば不動産利回りもそれにつれて上昇するというのが通常の考え方となります。
不動産投資は通常借入をして行われる
また、不動産投資は一部借入れをして行われる為、金利が上がった場合はコストがかさみ、投資のリターンに影響を与えます。よって実務的にも金利が上がった場合は不動産価格にマイナスの影響を与えるという考えが一般的です。
金利上昇で不動産価格は暴落するの?
確かに金利水準はコロナ前の水準まで上昇しており、不動産利回りの上昇圧力になる可能性
国債について、米国と日本に焦点を当ててみてみましょう。なお、下記数値はざっくりとしたものなのであくまでイメージとしてご参照ください。
10年国債利回り | 2011年3月 | 2016年3月 | 2020年6月 | 2021年3月 |
日本 | 1.25% | -0.05% | 0.03% | 0.15% |
米国 | 3.45% | 1.77% | 0.66% | 1.57% |
10年前、5年前、半年前と比較しますと、まず10年前では考えられない低金利の状況が続いています。また、コロナ真っただ中にあった2020年6月は特に米国債の金利低下が目立ちます。直近で金利が大分戻ってきているという印象です。では、やはり不動産価格は下落するのでしょうか?
すぐに不動産価格が暴落するとは考えにくい
個人的には今の金利上昇から不動産価格が即暴落するとは考えていません。理由は以下の通りです。順番に解説してまいります。
1.不動産利回りはここ一年の国債利回り低下に伴って下がってはいない
上述の通り2020年6月国債利回りは低下しましたが、不動産の利回りはそれに伴って低下し、不動産価格が上がったわけではありません。例えばJリートの配当利回りはコロナ直前で3.6%と歴史的な低水準でしたが、直近(2021年3月)は3.9%程度とまだ0.3%の開きがあります。
米国の不動産利回りも同様で、米国債の急激な低下はありましたが、不動産利回りはほとんど変化がありませんでした。これは国債とのスプレッドが上昇したということを意味しますので、今後ある程度国債の利回りが上昇したとしても上昇したスプレッドが縮むだけで済む可能性もあります。
やはりコロナの中、一般的に不動産はリスクがあるという見方をされており、市場に供給された大量のお金がほぼ株式と債券(国債)に回っていったということなのでしょう。これが今特に債券に向かっていたものがどこにいくのかという局面なのかもしれません。
2.”よい金利上昇”であれば賃料上昇がある程度不動産利回りによる価格低下を相殺する
おさらいになりますが、下記の数式をご参照ください。
不動産価格 = 賃料収入 ÷ 不動産利回り
金利上昇局面というのは通常、景気が上昇している、または上昇が見込める状況に起こります。経済が活性化するとそれはテナントの賃料負担力が増し、賃料収入が増加することにつながります。
したがって、分子である賃料収入が増えれば、仮に分母の不動産利回りが上昇したとしても価格の下落圧力を相殺することになります。
3.量的緩和により投資需要を旺盛であり、不動産市場の底堅さが見込める
不動産価格は需給により最終的に決まります。上記の数式で許容できる水準の利回りであれば投資したいという投資家は現在多数存在します。特に今の状況は中央金融機関により資金がジャブジャブに滞留しており、今は株式や債券に向かっていますが不動産への需要もまだまだ旺盛です。米国についてはコロナ期は例年の半分以下の取引でしたが直近では大きく増加していることからも不動産という資産に対する需要の底堅さが感じられます。
不動産に対する相対的な魅力が下がり、資金が流出するリスクはあり
懸念点の一つとしては、金利が上昇すると、もう国債に投資すればいいじゃん!となってしまうことです。国債とは投資の正解ではリスクがゼロという扱いなので、リスクがゼロで利回りが3%とれるなら、国債に投資した方が無駄にリスクをとるよりいいだろう!という判断になってしまいます。そうすると相対的に不動産の魅力が落ちて価格に影響する可能性はあります。ただ、国債に人気が殺到するとそれはまた国債利回り低下を招くので一種のシーソーゲームだといえます。
金利上昇のペースと質を見極めることが重要
したがって、金利上昇ペースが余りに経済実態とかけ離れた動きをする場合は注意が必要ですが、今の水準だけでもって不動産価格が暴落すると見通すのは少し無理があります。当然、10年間ほぼ右肩上がりできたものなのでいつかのタイミングで調整は入るのはやむを得ないと思います。ただ、今スグかといわれるとそう判断するのは拙速であると考えますので、金利上昇のペースを見極めながらの判断が必要になってくるのかなと考えます。
まとめ
- 断面で見ると金利上昇は不動産価格にマイナスの影響
- ただし、金利上昇局面とは経済の成長を表し、これは不動産価格にポジティブ
- 金利は更に上昇する可能性があるが”良い金利上昇”であるかどうかの見極めが大事
ここ1か月の間にかなり金利の上昇ペースが上がってきているので、見極めは難しい状況というのは正直なところです。引き続きしっかりと動きを見る必要があると思います。
注)本記事に記載している内容は個人的な見解を述べているものであり、その正確性を保証するものではありません。投資の際はご自身で深く検討の上、ご判断いただく様お願いいたします。
参考となる関連リンクはこちら↓をご参照ください。
[https://blue-light3.com/real-estate-investments04]
[https://blue-light3.com/real-estate-investements03]
[https://blue-light3.com/rea-estate-investments9]