昨日インベスコオフィスJリートがスターウッドキャピタルによるTOBに対して反対表明を正式に行ったことを記事にしましたが、同日2021年5月10日にスターウッドキャピタルがTOB価格の引き上げを行いましたので記事を追加します。
前回記事は以下をご参照ください↓
スターウッドがインベスコオフィスリートをTOB【外資ガチ対決】
インベスコオフィスJリートのスターウッドに対する第一手を発表
インベスコオフィスリートとスターウッドキャピタルそれぞれに動き
インベスコオフィスJリートが正式にTOB反対を表明
Contents
スターウッドキャピタルグループ、インベスコとは
スターウッドキャピタルグループ、インベスコはともに不動産ファンドを運用する投資会社です。インベスコはグループとしては不動産だけでなく株式や債券等様々な資産クラスを運用しています。
不動産ファンドについての解説は以下をご覧ください↓
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今回、インベスコが運用しているJリート「インベスコオフィスジェイリート」がスターウッドキャピタルグループによる敵対的買収を受けており、非常に激しい戦いがくりひろげられています。
スターウッドキャピタルがインベスコオフィスJリートTOB価格を21750円に引き上げ
スターウッドキャピタルがTOB変更届を出しました。変更点は以下の通りです:
インベスコTOB変更点
- TOB価格を一口20000円から21750円変更
- 買付下限投資口数の減少(5,344,355口→4,341,133口)
- その他TOB開始時の口数修正およびインベスコオフィス意見表明に伴う記載更新
TOB価格を一口20000円から21750円へ変更
スターウッドキャピタルがTOB価格を20000円から21750円に引き上げました。割合でいうと8.75%アップです。2021年5月11日時点のインベスコオフィス投資口の価格もその近辺まで上昇しています。
①物件稼働率が99.2%、②NOIが直近発表の数字、③その他資産負債に変更なしという条件で計算するとTOB価格のNOI利回りは約4.17%となります。
ただし、インベスコ発表によるとテナント退去により稼働率が93%程度まで低下することを見込んでいるのであくまで参考値となります。
項目 | 数値 | 備考 |
物件稼働率 | 99.2% | 93%程度に低下見込み |
物件取得価格合計 | 225,871 | インベスコ発表 |
取得価格NOI利回り | 5.18% | インベスコ発表 |
物件鑑定評価 | 274,131 | インベスコ発表 |
鑑定評価NOI利回り | 4.27% | 取得価格NOI利回りを基に試算 |
マーケット賃料引き直し後NOI | 12,803 | NOI×(111.7%×80%) |
マーケット賃料引き直し後評価額 | 299,790 | マーケット引き直しNOI÷鑑定評価NOI利回り |
TOB価格NOI利回り | 4.16% | 逆算 |
想定NOI利回りベース評価額 | 308,090 | マーケット引き直しNOI÷TOB価格利回り |
上記を基に一口あたりのNAV(投資口価格)を算出したのは以下の通りです。
仮にNOI利回りが4%だとして他の資産負債が同じだとすれば一口あたりNAVは23111円となり、まだほんの少しだけバッファがありそうにも見えそうですが余り上げ過ぎるとか今度はスターウッドキャピタルの収益がなくなってしまいます。
簿価 | 鑑定評価 | TOB価格利回り | NOI利回り4% | |
流動資産 | 23,781 | 23,781 | 23,781 | 23,781 |
有形固定資産 | 230,795 | 274,131 | 308,090 | 320,066 |
その他固定資産 | 1,348 | 1,348 | 1,348 | 1,348 |
総資産 | 255,926 | 299,260 | 333,219 | 345,195 |
有利子負債 | 126,280 | 126,280 | 126,280 | 126,280 |
その他負債 | 15,496 | 15,496 | 15,496 | 15,496 |
純資産 | 114,150 | 157,484 | 191,443 | 203,419 |
発行口数 | 8,801,973 | 8,801,973 | 8,801,973 | 8,801,973 |
一口あたりNAV | 12,969 | 17,892 | 21,750 | 23,111 |
買付下限投資口数の減少(5,344,355口→4,341,133口)
TOB下限でみるとスターウッド既存保有分と合わせて66.67%から55.27%ということになります。
買付下限口数を低下させた理由は、ざっくりいうとインベスコオフィスの投資主の中にパッシブファンド(合わせてだいたい25.6%くらい)が含まれていることと書いてあります。
パッシブファンドは基本的にTOBには賛同しないため、そこを加味した変更です。
買いが進めば浮動株比率等を基に売却するパッシブファンドがいるということで、相対による買い付けをすすめられるようにする処置も手当するとのことです。
今回スターウッドキャピタルはいくつかのSPCを用意してTOBを進めていますが、規制上公開買付者が市場外で例えばインデックスファンド保有投資口を取得する場合は過半数を保有する必要があるとのことからの修正の様です。
その他TOB開始時の口数修正およびインベスコオフィス意見表明に伴う記載更新
これは余り重要でなさそうなので詳細は割愛しますが、保有口数の修正と、例えば運用会社としての面談がまだ実現できていないことを情報のアップデートとして加筆をしているようです。
インベスコオフィスJリートTOB今後の展開は
スターウッドキャピタルは既に想定していた一手を打った
スターウッドキャピタルは想定されていたTOB価格の引き上げという一手を打ちました。
あとは市場の価格変動やインベスコの対抗措置によって更に価格を上げるのか、上げるならどこまで上げるのかという点につきるかと思います。
【2021.5.20追記】やはりインベスコが仕掛けてきましたので記事追加しました↓
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インベスコが関連会社によるオフィスリートTOB対抗策を発表
TOB価格引き上げによるインベスコオフィスの対応策は?
インベスコオフィスはスターウッドキャピタルによるTOB価格引き上げをある程度想定していたとは思います。
今回それが現実になったということですが、正直インベスコが行える対策も限られています。
結局はホワイトナイトもしくは自社で対抗の買いをいれていくしかないということになるかと思いますが、既にグループ会社(ハコ)による買い付けは開始しているので、引き続きまずは市場から買い集めることを継続していくことになるのかなと思います。
【2021.5.20追記】やはりインベスコが仕掛けてきましたので記事追加しました↓
インベスコが関連会社によるオフィスリートTOB対抗策を発表
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