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インベスコオフィスJリートのスターウッドに対する第一手を発表

2021年4月2日にインベスコ・オフィス・ジェイリートの大量保有報告書の提出と共にインベスコオフィスJリートの投資口全口を取得すべくTOBを仕掛けましたが、それに対する正式な反応が2021年4月15日にインベスコからなされました。本格的な争いはまさにこれからといったところですのでまずはインベスコの対応を検証、解説したいと思います。

前回の解説記事は↓になりますのでもしご興味があれば読んでみてください。
スターウッドがインベスコオフィスリートをTOB【外資ガチ対決】

インベスコオフィスJリートは意見を”保留”

インベスコオフィスリートが2021年4月15日付でスターウッドキャピタルグループからのTOBに対するプレスをリリースしました。

http://www.invesco-reit.co.jp/file/news-71e691de7188cf83cece29a69c5eda33f40182ec.pdf

結論としてはまずはTOBに対する意見表明はスターウッドキャピタルグループに対して既に送付している質問状からの回答を待ち、後述する特別委員会の意見を聴取した上で行うとして、一旦”保留”としています

まあ当然ですが、プレスリリースを確認する限りではトーンは明らかに”反対表明”をしている様に見受けられます。

インベスコのフィナンシャルアドバイザーは野村證券&日興SMBC証券、リーガルアドバイザーは西村あさひ&長島・大野・常松

インベスコのプレスリリースによると、フィナンシャルアドバイザーは野村證券と日興SMBC証券、リーガルアドバイザーは西村あさひと長島・大野・常松法律事務所を選定しています。

フィナンシャルアドバイザーに外資系投資銀行がいないのは少し意外でしたが、野村は言わずと知れた国内トップの証券会社ですし、日興SMBCも広い意味で国内ナンバー2です。

インベスコの借入先を詳しくみていませんが、銀行系を入れているのは不動産ファイナンスの観点から若干配慮を働かせているのかもしれません。

妄想ですが、もしインベスコが国内の投資家をホワイトナイトとして探している場合は国内証券会社を選定する理由の一つになりえます

恐らく国内のフィナンシャル、ストラテジック両方の投資家により食い込んでいるであろう金融機関は日系金融機関だからです。

外資系投資銀行は圧倒的なグローバルのネットワークを駆使して世界中の投資家をつなげることができます。

ただし、外資の投資家も一筋縄ではいきません。東芝がいい例です。債務超過解消の為ウルトラCで外資系の投資家から出資を集め事なきを得ました。これは日系投資銀行にはできない芸当です。

投資家を引っ張ってきたのは記憶が正しければゴールドマンサックス(GS)だったと思います。GSの担当者は億を超えるボーナスをもらっていたでしょう。

ただ、その後の外資投資家の要求は超絶厳しく、今まさにCVCをはじめとしたPEファンドから買収提案を受けたり、社長が退任したり混乱を極めています。

毒を以て毒を制すというと外資投資家に失礼ですが、やはり危機時にそういった利害関係者を引き入れると後々苦労する可能性があるという例です。

外資系であるインベスコが外資系のホワイトナイトを避けるとしたら何とも皮肉な話ですが、内情はどうなんでしょうか?

リーガル面は間違いなく国内屈指の法律事務所を選定しています。国内の企業法務で言えば西村あさひ、長島大野常松、森濱田松本がトップ3であるとの認識ですが、ばっちりそのうちの2先を選んでいます。

スターウッドキャピタルグループがTOB成立、スクイーズアウトを行って上場廃止とする上ではいくつか法制度上のポイントがあるので、法務対策は非常に重要になってきます。

インベスコオフィスJリートは特別委員会の設置

インベスコは投資法人(リート)の監査委員のみから構成される特別委員会を設置し、スターウッドキャピタルグループに対する質問状の回答を受領した上でこの特別委員会からの助言を最大限尊重した形で意見表明を行うとしています。

インベスコオフィスJリートはスターウッドキャピタルグループに対してTOB期限の延長要請

現状のTOB期間は5月24日までとありますが、まずは投資家に対しても十分な検討ができるようにとTOBの最長期間である60営業日に延長するようにスターウッドキャピタルグループに要請しています。

インベスコオフィスJリート今後の展開を予想

今回のスターウッドキャピタルグループによるインベスコオフィスJリートのTOB成否を占う上ではいくつかポイントがあります:

インベスコオフィスTOBのポイント

  • スターウッドキャピタルグループはもう一段の値上げを表明するか?
  • インベスコはほぼ100%阪大表明を予想。唯一賛同しうるポイントは上場廃止後の運用会社をインベスコに選定すること
  • ストラクチャー、法制度観点からの買収可否

スターウッドキャピタルグループはもう一段の値上げを表明するか?

2021年4月15日付のインベスコオフィスJリートの終値は20860円です。図らずも私が鉛筆なめなめでマーケット賃料に引き直した一口あたりNAVとほぼ同額です笑。

詳しいご説明は以下記事をご覧ください↓
スターウッドがインベスコオフィスリートをTOB【外資ガチ対決】

スターウッドキャピタルグループのTOB価格が一口あたり20000円なので、今の取引価格はそれ以上の買取価格を要求しているか、物件ポートフォリオの価値がそれ以上あると今は投資家が判断しているかのどちらかということになります。

2020年10月時点(百万円)簿価鑑定評価マーケット賃料NOI利回り4%
流動資産23,78123,78123,78123,781
有形固定資産230,795274,131299,790320,066
その他固定資産1,3481,3481,3481,348
総資産255,926299,260324,919345,195
有利子負債126,280126,280126,280126,280
その他負債15,49615,49615,49615,496
純資産114,150157,484183,143203,419
発行口数8,800,1068,800,1068,800,1068,800,106
一口あたりNAV12,97117,89620,81123,116

今の取引価格のまま推移するとなると、現実的にはTOBは不成立になると考えるのが自然です。その場合、スターウッドキャピタルグループの選択肢は①TOBを諦めるか②TOB価格を上げて再チャレンジかのどちらかです。

TOB価格を上げると判断する為には、スターウッドキャピタルグループが一口20000万円以上の金額を払って買収しても十分にリターンを狙える自信があることが大前提になります。

例えば買収価格を20000円から10%アップして22000円にした場合、それ以上の価格で最終的に投資回収ができる絵を描けなくてはなりません。

リートでの買収価格引き上げが少し難しいのが、企業買収だと成長カーブを鉛筆なめなめで描いてリターン見通しを上げることは、それが実現するかどうかは別として比較的容易です。

不動産、特にリートが保有している物件は基本的には手堅く賃料を稼いでいくコア物件なので、価値を大幅に上昇させるのは企業と比べて困難です。よほど物件に付加価値を付けて賃料水準を上げるか、市場全体が盛り上がらない限りは難しいと考えます。

それが簡単に実現できる場合はよほどインベスコの物件が結果的には割安だったと考えます。

ありえるとしたらポートフォリオ単位で物件を買い取った場合はそれを丁寧に選別して含み益のある比較的小さな物件は即売却し、大きな物件は少し時間をかけて磨き上げて売却ということになろうかと思います。

スターウッドキャピタルグループ運用ファンドのうちのどのファンドに組み入れる想定か分かりませんが、コアであればそのままのレバレッジにして、オポチュニスティックであれば、おそらくファンドレベルで更にレバレッジをかけてリターンを追求すると思われます。

対象物件のタイプからするとコアかなとは思いますが。

いずれにしろ、スターウッドキャピタルグループはTOB価格を吊り上げるにせよ企業買収で見られるような大幅な上げは難しいのではないかと思います。

上げても10%程度なのではないでしょうか。もちろん、ホワイトナイトが現れて買収合戦になれば限界まで吊り上げる可能性はあります

インベスコはほぼ100%反対表明を予想。唯一賛同しうるポイントは上場廃止後の運用会社をインベスコに選定すること

このままの状態であれば、インベスコはほぼ100%反対表明をするでしょう。ただ一つ例外があります。上場廃止後もインベスコが満足する条件で物件ポートフォリオの運用会社であり続けることになる場合です。

スターウッドは「本資産運用会社及び対象者の役員会との間で非公開化後も、本資産運用会社が、対象者の資産運用会社として、スターウッド・キャピタルの考える施策に沿って、資産運用業務を継続していただくための対話を試みる方針です」と書いてありますがこれを額面通り受け止める人はいません。

その証拠にしっかりと協議が成立しなければ運用会社(インベスコ)との資産運用委託契約を解約するとあります。

私がスターウッドであれば対話の時点でインベスコに無理難題を要求し、「真摯に対話を試みたが残念ながらお互い歩み寄ることができなかった」とでも言ってさっさと自社の意の通りに動いてくれる運用会社を雇うか自ら運用を行います

インベスコの立場からすれば運用会社としての地位を保つことができれば投資家が複数になるか、実質一社になるかだけの違いになるかと思いますので、収益上のデメリットはほとんどなくなります。

後は賛同することによるレピュテーションリスクを負ってしまう可能性があることと、同じような上場リートのビジネスを行うことはできなくなるかもしれないということです。もしかしたら一旦非上場化しても数年後再上場するかもしれませんが笑。

従って、インベスコとスターウッドキャピタル間で、お互いが合意できる条件でしっかりとインベスコが契約上運用会社としての地位を上場廃止後も維持できるということになれば、インベスコが取りうる行動パターンとしては、一旦反対、もしくはTOB価格の吊り上げを行ってもらい、既存の投資家に収益確保の機会を提供し、レピュテーションリスクを軽減した上でTOBに賛同するという行動パターンもあり得ます

ただ、スターウッドキャピタルの要求も多いでしょうし、おそらくかなりのハードネゴになるでしょうからシナリオ的には実現が難しいかもしれません。

ストラクチャー、法制度観点からの買収可否

本TOBの成否はストラクチャー上、法制度上いくつかの論点があり、実際インベスコ側の質問状にてかなり詳細に指摘されています。私も全てを深く完全に理解しているわけではないのですが簡単に説明していきたいと思います。

TOBポイント

  • スクイーズアウトの適法性
  • 上場廃止後の導管性要件が満たされなくなる可能性
  • 既存借入、投資法人債の取り扱い

スクイーズアウトの適法性

スターウッドのTOBへ応募した投資主が議決権ベースで3分の2超となれば特別決議でTOBに応じなかった残りの投資主の持分をほぼ強制的に買い取る、もしくは投資口を併合してしまうことができます。

投資口を併合すると少数投資主の投資口が端株扱いになってしまい、強制的に買い取られてしまいます。これをスクイーズアウトと呼びますがその際”強圧性”が問題になります。

強圧性とは、投資主に対してTOBに応じなければ著しく不利になると投資主に感じさせ、文字通り強圧的に感じさせるような手法で投資口を買い集めた場合、スクイーズアウトを適正に行う上で弊害になりえるということになります。

スターウッドもスクイーズアウトが想定通りに行われない可能性を認めているので少なくともリーガル上はここはポイントとなるかもしれません。インベスコもかなり繰り返しこの点については問題提起をしながら質問をしています。

ただ、この問題だけを見て現状の制度でスクイーズアウトが全くできなくなるというわけでもなさそうです。私も正直深く理解していないので、調べてこの部分については追記していきたいと思います。

上場廃止後の導管性要件が満たされなくなる可能性

投資法人(リート)は課税法人ではなく、法人税の支払いは不要です。ただし、一定の条件を満たす必要があり、満たせない場合は法人税が課税され、投資家からすると二重課税となり投資家からみるとリターンが悪化します。

インベスコが指摘しているのはこの点で、導管性要件の一つとして一人の投資主が50%超の持分が無いことという点がありますが、今回スターウッドキャピタルグループが買収した場合ここに抵触することになり課税されるリスクがあるという点です。

額面通り受け取るとその通りなのですが、これは何か抜け道があるのかもしれません(例えばスターウッドはファンドなので、その場合の考え方等)。私もここは不勉強なのでスターウッドの回答を見てみたいと思います。

ただ、いずれにしろスターウッドからすると、投資法人を清算して気に入った物件を特定目的会社(TMK)や合同会社(GK-TKスキーム)でくるみなおせば解消できる問題ではあると考えますが、大分知識がさびついているのでその場合は何らかの不具合が出てくるかもしれません。

既存借入、投資法人債の取り扱い

インベスコのプレスリリースによると、借入金のデフォルト事項として合併を除いた上場廃止となった場合が挙げられるとあります。

また、投資法人債についてもクロスデフォルト条項により、借入金がデフォルトした場合は同様にデフォルトになると記載されています。

通常リートでも不動産に投資をする際は借入金(レバレッジ)を活用しますが、契約上遵守しなければいけない事項があり、違反するとデフォルト(期限の利益喪失)になります。

そうなると貸主である金融機関が強制的に不動産を処分できるようになる仕組みです。

その契約条項に投資法人(リート)が上場を維持することとあるのがポイントになります。

金融機関に強制的に不動産を換価されてしまった場合、スターウッドキャピタルグループは想定していたリターンを上げることが不可能となるので避けたいところです。

スターウッドキャピタルグループからすると対応策はいくつかあります。
まずはTOBの際にスターウッド側のファンドレベルで借入を行い、買収後は借入金、投資法人債共にファンド借入で返済してしまうという手法です。

タイミング等もありますので、融資をする側からしても契約上の手当が必要なので色々難しいですが不可能ではありません。

ただ、日系の金融機関が対応するかどうかは謎です。海外の金融機関だとおそらく金利コストが高くなるのでスターウッドにとっては不利になります。TOB上はクレディスイスからTOB資金については融資を受けるようです。

その他の方法として事前に金融機関を回りデフォルトにはしない旨交渉することも想定されます。その際は新たな担保提供や、自己資金の追加等を要求される可能性はありますが、スターウッドは既に国内金融機関とは取引関係にあるでしょうから意外に簡単な交渉で済むかもしれません。

ストラクチャー上の問題で投資法人を清算することになった場合も借り換えに応じる金融機関はいるでしょう。投資法人債は清算の過程の中で物件を一部売却すれば十分賄える残高です(174億円)。

投資主の観点から見た注意点まとめ

インベスコが何度かプレスリリースの中で警鐘を鳴らしている通り、スターウッドが悪意を持って行動すれば結構不利な形で投資主が売却を判断せざるを得ない状況になりえることになります。

まず、TOBに応募しなければスクイーズアウトの段階で不利に買い取られてしまうリスクがあります。しかも会社の株式と違い投資主は買取請求権等の保護が仕組上不足しており、非常に不利な形で投資口を併合されてしまう可能性があります。

スクイーズアウトをしない場合でも、上記にあるような導管性要件や借入上の対応で、投資法人を清算し、いい物件を例えば簿価や鑑定評価程度で別のハコに移し替えてしまい、残った投資主への清算配当が不当に抑えられてしまうリスクもあります。

話を整理しているとスターウッドの狙いが何となく透けて見えてくる気がしますが、これは既存の投資主からある種のチキンゲームになってしまうのでインベスコの指摘もごもっともであると言えます

とりあえずはインベスコの強い”反対意思”が感じられる”意見の保留”

インベスコオフィスJリートは今後どのようにスターウッドキャピタルグループへの対応策をとるか

表向き上の意見表明は”保留”としているものの、インベスコオフィスJリートは今回の買収に対してはほぼ確実に反対のスタンスでしょう。

しばらくした後にスターウッドキャピタルグループからの質問状回答が来て、それを基に特別委員会が意見を出し、インベスコオフィスJリートの意見表明が行われる予定です。

結局は上記の通り、可能性は低いですがTOB価格を吊り上げて賛成意見を表明するか、反対意見を表明してホワイトナイトか自社に一旦買い取るということになると予想していますが、とにかく次の一手が楽しみです。

願わくば想像できない対応策がでてくると面白いですね。

【2021.5.20追記】結局インベスコは自社グループと投資家連れてきて対抗する様です↓
インベスコが関連会社によるオフィスリートTOB対抗策を発表

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