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新電力パネイルが民事再生申立、これからどうなるのか?

新電力の株式会社パネイルが2021年5月18日東京地裁に民事再生申立をしました。

業界大手であったF-Power(エフパワー)に続いての倒産(法的整理)になります。
F-Powerの会社更生申立を考察【スポンサーは誰に?】

F-Power会社更生申立

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F-Powerの会社更生申立を考察【スポンサーは誰に?】

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どのような背景で民事再生に至ったのか、F-Powerとの違いも含めて考察していきたいと思います。

新電力パネイルとは

株式会社パネイルは、東大卒→ディーエヌエー入社の名越達彦氏が設立した電力ベンチャーです。

経産省の「J-Startup」にも選出され、日経新聞が発表する「NEXTユニコーン推計企業価値ランキング」の2位にもなっている有望企業でした。

当然ベンチャー企業として注目され30億円を超える資金をベンチャーキャピタル他から調達しています。

パネイル民事再生申立の背景と今後の見通し

民事再生を申し立てたパネイルですが、どのような背景で法的整理に至ったのか、これからどうなるのかを考察していきます。

2018年の電力価格高騰で債務超過寸前になり危機に

一度目のピンチはエフパワー同様、電力価格の高騰により電気小売事業が大きく傾きます。

やはり仕入れ価格が高くなる一方で一般消費者向けの売電料金が逆ザヤになってしまい、債務超過寸前までいってしまいますが、この時は資本注入を受けなんとかやり過ごしたようです。

東京電力との合弁事業でトラブルに

電力価格高騰でのピンチを何とか乗り切ったのち、パネイルはプラットフォーム事業に舵を切ります。

その中で誕生したのが東京電力との合弁事業であるPinTです。

PinTの事業はかなり順調に推移していたらしいのですが、ここでパネイルにとって非常に重要なCTO(最高技術責任者)が東京電力側に引き抜かれてしまいます

当然、競業避止義務違反に該当するので現在法廷で係争中とのことですが、この出来事がパネイル本体のビジネスを大きく毀損してしまったと言えます。

その中で今年2021年起きた電力価格の爆謄で力尽きたということでしょう。

民事再生でパネイル債権者の回収はどうなる?

パネイルは電気小売業のベンチャーであり、システム等の資産はあっても換価性のある資産は無いと考えます。民事再生申立時は債務超過だったのでしょう。

まず30億円以上あったベンチャーキャピタル出資部分は全損でしょう。

また、エフパワーとの相違点は、既にスポンサーが支援予定である点です。

金融機関の融資については、報道にあるとおりのスポンサーの支援額によります。事業譲渡であればパネイルのはじき出された企業価値が譲渡価格、もしくは出資額になりそれが返済原資になります。

いずれにしろ全額回収には程遠く、恐らく戻ってきて10%程度でしょう

なぜならば、スポンサーからすると金額はなるべく低く抑えたい中、再生計画で定められる返済計画は良く清算価値と比較されます。

資産が無いパネイルは清算したとしても恐らくほとんど回収される資産は無いでしょうから、これを利用して支援金額を抑えることをトライするはずです。

F-Power(エフパワー)とパネイルの違い

同じ業種で法的整理に至ったパネイルとF-Powerに何か違いはあるのでしょうか?検証してみます。

パネイルはビジネスの根幹である人材を奪われたのが主要因?

パネイルもエフパワーも電力価格の高騰が最後の引き金となり法的整理に至りました。最後は両社とも債務超過、もしくは実質債務超過だったのものと推測されます。

ただ、パネイルは2018年に発生した価格高騰で既にビジネスの軸をプラットフォームに移していたようです。

そのプラットフォーム事業を東京電力と合弁事業でPinTを立ち上げたのですが、そこでパネイルにとって非常に重要な人材(CTO、最高技術責任者)を東京電力側に取られてしまった様です。

報道を読む限りどちらかというとこちらがパネイル民事再生の主要因の様です。

パネイルの民事再生とエフパワーの会社更生の違い

制度の違いになりますが、一般的に民事再生は「DIP型法的整理」と言われています。DIPとはDebtor in Positionの略称ですが、申立した企業の経営者はそのまま経営を続ける前提の法的整理になります。

一方で会社更生は申立後いったん管財人が選任され会社の運営は経営者の手から離れるのが通常です。ただし、現在では裁判所が認めれば経営者が引き続き経営に携わり再生することができます。これをDIP型会社更生と呼びます。

民事再生よりも会社更生の方が債権者の権利行使が制限されます。例えば民事再生では担保を付けている債権者は別除権者と呼ばれ、手続き上は制約なく担保権行使が可能です。

一方で会社更生では担保権を有している債権者も更生担保権者として権利の行使が一旦制限されます。

従って会社更生は一般的には担保関係が複雑かつ規模が大きな企業の再生に活用される傾向があります。

エフパワーは規模が大きかったのと、恐らく債権者の調整が複雑だったのでしょう。一方でパネイルは担保となるようなさしたる資産はベンチャー企業なので乏しいと思われるのと、既にスポンサーがいるとの報道なので、手続きが比較的簡素な民事再生を選択したものと思われます。

パネイル民事再生申立のまとめ

パネイルとF-Powerの法的整理申立の背景比較はだいたい以下の通りといったところでしょうか。

ポイント

  • パネイルもF-Powerも仕入電力価格の高騰が最後の引き金に
  • パネイルもF-Powerも種類は違えど内紛を抱えていた
  • パネイルは既にスポンサーがいる模様で出口もほぼ見えている。F-Powerのスポンサー選定進捗は不明

パネイルがこれからどうなるかについては、既にスポンサーがいる為支援額と支援内容を詰めれば再生計画を提出して粛々と債権者の同意を得るということなので、既にある程度は法的整理の出口は見えています。

一方でF-Powerはまだスポンサーについての報道が出てきていないので今後の見通しはまだ不明です。

ただし、パネイルについては東京電力に力でねじ伏せられてしまった感があります。係争結果と共に事の顛末を見守りたいと思います。


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