外資系金融はハードな職場環境の見返りに年収何千万という給与が当たり前の激しい世界です。でもそこまで激務でなくて給与も高い外資系金融が存在するとしたら…?外資系の運用会社(アセットマネジメント)はまさにそれに近い業界であると言えますので詳しい内容をご紹介していきます。
仕事柄アセットマネジメント会社とは深くかかわっていること、そして友人からも生の声を集めることができましたので、なるべく実情に沿って解説をしていきます。
Contents
アセマネが激務と思われている理由
アセマネとは、アセットマネジメント会社、すなわち運用会社の事を指しますが、やはり金融のくくりということもあり、激務であると思われているかもしれません。
ただし、投資銀行とアセマネはまた違ったビジネスモデルになります。
ビジネスモデルが違えば業務の仕方も異なってきますので、実情をご説明したいと思います。
アセマネ(アセットマネジメント会社)とは?
アセットマネジメントとは運用会社のことを指し、読んで字のごとく、資産を運用することを生業とする会社です。
年金基金や保険会社、銀行等などの機関投資家から資金を預かって運用しリターンを上げること、個人から投資信託やETFを通して資金を預かり同じようにリターンを上げていきます。投資信託の目論見書をまともにみることは少ないと思いますが(笑)、そこに運用会社として記載があるのが今回ご紹介する業界です。
大きな特徴としては預かり資産に応じて報酬をもらうというビジネスモデル(あとは一定以上のリターンを上げたら追加でインセンティブがあることも)で、預かり資産の金額の大きさが収益に比例していきます。
一般的には機関投資家向けの商品(ファンド)は大きく変動することは余りありませんが、個人投資家のお金は市場が大きく動くと解約が入り報酬に影響しますが、総じて安定的なビジネスです。
投資銀行の収益モデルはやはり案件を絶えず取ってくる必要があるフロー型であれば、運用業界(アセマネ)はストック型ビジネスであるといえます。
これはクビリスクにも少し関わってきており、アセマネ業界は外資系でも投資銀行に比べると一般的にクビリスクは低いといわれています。
外資系アセマネは激務?ワークワイフバランスの本当のところ
同じアセマネでも、外資系となれば働き方が変わり激務になるのかどうか?結論は恐らく皆様が想像しているほどの激務(毎日朝帰り、週末出社)ではありません。
コスパ最強?外資アセマネ業界のワークライフバランスは概ね良好
これはもちろん金融全般に言えることですが、ハードな部署が多いです。
良く聞くのは日系でも外資系でも投資銀行業務は特にハードで、午前様は当たり前。私の友人も結構いい歳なのですが、外資系投資銀行で2日連続完全徹夜をしていたそうです汗。
運用会社(アセマネ)は一部を除いてワークライフバランスは概ね良好です。聞いたところによると、朝は早いところも多いですが、夜6時くらいからパラパラ退社し始め7時には誰もいなくなるそうです。日中もあくせくすることは余りなく、落ち着いて仕事ができます。
おすすめは規模が大きい運用会社の機関投資家営業とプロダクトスペシャリスト(オルタナティブ資産担当)です。
まず規模大きいと体制が整っており、一人が色々な業務を兼務するということが少なくなります。
また機関投資家営業は顧客が年金基金だったり長期での運用を行うので日々大きなイベントが起きづらいという特徴があります。
オルタナティブ資産のプロダクトスペシャリストも資産の流動性がないので日々事件が起こることが余りありませんので外資系金融機関でありながらかなり人間の生活ができるところです。
もちろん会社やチーム体制によっては激務も
もちろん上記は一般論であり、例外もあります。某米系の運用会社ニ〇〇〇〇〇〇〇〇〇ンは激務で有名です(その分給料もかなりいいとは聞きますが)。
また、運用商品が市場の変化で大きな損失がでたりするとその説明を行う為の準備で非常に忙しくなります。海外の運用チームなどと会議が必要になったりする場合は時差の関係で遅くなったりします。
その他、大きな金額の案件を獲得する(マンデートといいます)時はそのプレゼンテーション準備の為多忙になったります。
アセマネの職種各種とその激務度合い
ひとくちに運用会社といっても色々な職種があります。ただし、職種によっては境目があいまいだったり、呼称が異なったりします。
アセットマネジメントの主な職種
- 営業(機関投資家、ホールセール)
- プロダクトスペシャリスト
- 運用
- アナリスト(バイサイド)
- RFP作成チーム
- ミドルオフィス・バックオフィス(コンプライアンス、オペレーション等)
営業(機関投資家、ホールセール)
営業、よくRM(Relationship Manager)と呼ばれますがビジネスの根幹です。
運用会社の営業は大きく分けて2種類あります。機関投資家向け営業とホールセールと呼ばれるものです。機関投資家営業とは、年金基金や金融機関等の機関投資家向けに運用商品(ファンド)の提案をするものです。ホールセールとは主に個人を対象とした投資信託等の商品を証券会社に取り扱ってもらう営業です。
もちろん営業なのでお客さん次第ですが、余り激務ではなく、総じてブラックさは余りないイメージです。
ただ、最近はコロナや規制で厳しくなってはいますが接待攻勢をかける会社であれば業務外での拘束が長くなります。
運用担当者
実際に資産を運用するいわば花形職種と言えます。
ただし、外資系では運用対象資産は海外が多く、運用担当者も海外である場合がほとんどです。従って日本の拠点では運用機能が無いところも多いです。
日本株や国内債券にかかるものやクオンツ運用、日本国内のヘッジファンド投資等、その他不動産など日本国内の資産が対象となっている商品がラインアップにあれば日本国内にも運用担当者がいます。
海外の運用担当者も人によりますが結構早く帰宅している様です。
プロダクトスペシャリスト
プロダクトスペシャリストとは営業と運用担当者の橋渡し役です。
営業は多岐にわたる運用資産を顧客に提案する為、幅広い商品知識が必要になりますが、海外の全ての資産クラスをマスターすることは難しいです。
よって、それぞれの資産クラスに応じて、その投資資産に精通している専門家を日本国内に置いています。
彼ら、彼女らは海外の運用担当者と密にやり取りを行い顧客に対してより深い説明を行うことが必要な場合に直接説明したり、何か市況に大きな変化があった場合に専門家として説明することが求められます。
会社によってはこの機能を実質的に営業が対応したり、呼称がクライアント・ポートフォリオ・マネージャーと言われたりして、担当業務の境目があいまいです。
担当する機能の多さで激務さは変わってきますが、比較的規模が大きいところであれば職務の配分が適切になされているので比較的ホワイトです。
アナリスト
主に国内の株式や債券の調査分析を行う職種です。運用会社のアナリストはバイサイド・アナリストと呼ばれます。より大きな概念で国の経済状況等を分析する人をエコノミストとも言います。日本の投資資産として取り扱っていない外資系運用会社はアナリストを置いていなかったりします。
株式は当然決算期に非常に忙しくなります。債券もクレジットイベントが発生しそうになったり、金利動向に動きがあればかなり激務になるでしょう。
商品開発(ストラクチャリング)
特に海外資産を扱う運用商品(ファンド)はファンドが設立されている国によって様々な規制や会計・税務の知識が必要になります。
一番有名なものとしてはケイマン籍、その他ではルクセンブルグ籍、イギリス領ジャージー籍、米国デラウェアのパートナーシップなどがあります。
日本を主な投資家として新たにファンドを設立する場合にベストなストラクチャーでファンドを作り上げそれをメンテナンスするのが商品開発(ストラクチャリング)の業務です。
作業量が膨大なことは余りないのですが、海外とのやり取りが多く、激務度合いはそこそこ高いです。
RFP作成・クライアントサービス
RFPとは、Request for Proposalの略称で日本語訳は「提案依頼書」といいます。
IT業界でも使われる用語ですが、投資家に対して運用会社の成り立ち、業績、チーム体制や対象となる運用商品(ファンド)の実績等を事細かに記載された書類になります。
投資家よっては対象となる運用商品(ファンド)の投資を行うにあたってこのRFPの提出を要求します。
RFPは運用会社そのもののアピール、そして運用商品(ファンド)の売りを詳しく記載する非常に重要な書類で、何十ページに上ります。
これを書きあげるのはかなり骨が折れる作業です。実質的に営業とプロダクトスペシャリストが作成する場合もありますが、専任のチームを置いている運用会社もあります。
従って激務度合いでいうと結構高いです。
クライアントサービスとは、運用商品(ファンド)に投資をしてもらった顧客に対する書類や報告書などアフターサービスを行う業務です。
ミドルオフィス・バックオフィス(コンプライアンス、オペレーション等)
ファンド運営とは常に各国の規制を強く受けるため特にコンプライアンスは各国と連携しながら法令・規制を遵守する非常に重要な機能です。
また、オペレーションは資産の発注や約定、引き渡しや顧客からの資金受け取りと運用資産への送金指示など、ミスが許されずしっかりとできて当たり前の非常に重要な業務になります。主にこの二つの業務はファンドの根幹にかかる部分です。
外資アセマネの給与水準(激務度を考えると高コスパ)
日系金融と比較すると高額。外資系投資銀行と比較すると控えめ
外資系であれば日系企業と比較すると高額であるのは間違いありません。ただし、外資系投資銀行と比べて落ち着いています。これは先に述べた通り収益にブレが余りないので、ホームランを打つということが起きづらく、ボーナス額の変動が比較的小さいことが理由です。それでも一般的には高収入です。
転職した場合は前職の給与水準によって大きく変わりますが、あくまでイメージとしては以下の通りでしょうか。最近はもうちょっと低いと思われます。
アナリスト:~1000万円
アソシエイト:~1500万円
バイスプレジデント:~2500万円
エグゼクティブディレクター:~4000万円くらい
マネージングディレクター:4000万円くらい~
知り合いの某米系アセマネ会社のマネージングディレクター(MD)はベースの給料が5000万円でした(プラスボーナス)。
時給換算では非常に高い。コスパ最強?
外資アセマネの魅力はなんといってもワークライフバランスです。投資銀行は給与が高い分激務ですが、アセマネはたいていの場合、人間らしい暮らしができます笑。そういった意味では時給は投資銀行より高いかもしれません。
外資系アセマネの主なプレーヤー
外資系運用会社の数は多い
運用会社は非常に多岐にわたります。金融系から保険系、それから独立系と合わせるのかなりの数です。それぞれ得意分野と余り扱っていない分野があったり、独立系は資産クラスに特化した会社もあります。広義ではプライベートエクイティ(PE)ファンドや、不動産ファンドも運用会社に該当するかと思いますが今回は比較的幅広い運用資産を扱う企業をリスト化してみます。
漏れがあったらすいません。
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不動産ファンドの仕事内容を解説します【ワークライフバランスも】
投資銀行系アセットマネジメント会社
余り投資銀行系アセットマネジメントと呼ぶことはありませんが、外資系でよく聞く代表的な金融機関はたいていその系列で運用会社(アセットマネジメント)も擁しています。
投資銀行系資産運用会社
- ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント
- JPモルガン・アセット・マネジメント
- DWS(旧ドイチェアセットマネジメント)
- モルガンスタンレー・インベストメント・マネジメント
- UBSアセット・マネジメント
- クレディ・スイス(投資銀行のエンティティ内)
- HSBC投信
- ラザード・ジャパン・アセットマネジメント
- 他
どの企業もたいてい幅広い商品ラインアップを卒なく用意しているイメージでしょうか。
保険・総合金融・独立系外資アセットマネジメント会社
保険業界は自身で預かった保険料を運用するビジネスです。その運用サービスを第三者の機関投資家に提供しているという仕組みです。また、投資銀行グループから派生していない、資産運用に特化した運用会社も数多くいます。
保険・その他総合金融・独立系運用会社
- ブラックロック
- インベスコ
- フィデリティ
- ピムコ(パシフィックインベストメントマネジメント)
- PGIM(プルデンシャル生命系)
- シュローダー
- アバディーン・スタンダード
- ニューバーガー・バーマン
- アライアンス・バーンスタイン
- ウェリントン
- ラッセル・インベストメンツ
- 他
ブラックロックは元々ブラックストーンと同じ会社が分かれて世界最大級の運用会社として君臨しています。ピムコは債券の運用が有名で”債券王”と呼ばれたビル・グロース氏が最近引退しました。その他の運用会社も株式や債券の伝統資産からオルタナティブ資産と幅広い商品(ファンド)ラインアップがありますがそれぞれ強い分野が結構はっきりしているのが特徴です。
外資系運用会社(アセマネ)のメリット・デメリット
メリットは、やはり非常に高水準の給与体系に関わらずワークライフバランスがあり、非常にコスパの高い業界だということでしょうか。また、あくまで比較論ですがクビリスクが相対的に低いことも魅力です。
デメリットは余り見当たりませんが、あえていうと業務内容が専門性が高く余りつぶしがきかないということと、もし手に汗握って大きな案件をバンバン取ってくるようなバリキャリ志向の方には物足りない業種かもしれません笑。
外資系運用会社(アセマネ)に就職するには
新卒での就職は狭き門
アセットマネジメント業界はどの職種にしてもかなり高度な専門性が求められる為、新卒採用枠は非常に限られています。ニッチな業界でもあり、新卒での入社はかなりハードルが高いと思われます。
投資銀行系のアセットマネジメントは景気がよければ年に1人から数人くらいの採用がある様。たった一人となるとそこに選ばれるのは至難の業でしょう。
現実的には他金融機関からの転職
やはり現実的には日系やその他外資金融機関から転職するのが現実的だと思います。間口は意外に広く、例えば営業であれば証券会社や投資銀行の市場部門で営業の経験があれば比較的入りやすいかと思います。また、日系の信託銀行から転職する人も多い様です。
ただ、どの会社も少人数であることが多く、採用枠がでてきてもタイミング次第というところはあります。
また、最近の傾向としてはどの運用会社もオルタナティブ資産を強化しており、オルタナティブ投資に強いプロダクトスペシャリストや、商品開発の採用を積極的に行っているようです。
都市銀行でインフラ、不動産、プライベートエクイティ関連の業務経験があり、かつ英語が使えればかなり採用されるチャンスがあると思います。信託銀行もルートとしては有望です。
ちなみにオルタナティブ資産とは直訳すると代替投資と呼ばれ、伝統資産(株式や債券)以外の資産クラスを指します。例としてはヘッジファンド、プライベートエクイティ(PE)、プライベートデット、インフラ投資、不動産等が挙げられます。
転職の場合は専門エージェントのサービスを活用するのが現実的
では実際に転職する為にはどうすればいいのか。
一番現実的な方法は転職エージェントの活用です。
私がいくつかのエージェントを活用した体験談を記事に書いておりますので、よろしければご参照ください。
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外資運用会社(アセマネ)まとめ、業界研究におススメの本
まとめ:ワークライフバランスと高収入を両立させたい人におすすめ!
外資系アセマネの収入は外資系投資銀行に比べると見劣りしますが、一般的にみれば非常に高水準です。
一方で夜中まで業務を行うことはほとんどないため人間的な生活ができ、外資系金融の中では屈指のワークライフバランスであるといえます。時給換算で言えば外資系投資銀行よりいいかもしれません笑。
外資系であればより近い形で世界の最先端の運用手法を目にすることができます。この世界に入ることも検討してみてはいかがでしょうか?
運用会社(アセットマネジメント)業界のおすすめ本
以下の本2冊が業界の基本を非常に良くまとめていると思います。合わせて読むと業界とそれぞれの業務の仕組みの理解が深まるかと思いますのでお勧めです。ファンド業務は複雑ですし、専門性が高い割に余り体系的な入門書がないのでこういう本は貴重かと思います。