スルガ銀行と、スルガ銀行株式を2割程度保有し資本提携をしている家電小売業のノジマの対立が各社で報道されています。
対立の要因はなにか?仮に資本提携解消となった場合、だれが2割のスルガ銀行株式を取得していくのか考察していきます。
Contents
スルガ銀行がノジマと資本提携した経緯
スルガ銀行とは
スルガ銀行は静岡県を本店とした地方銀行です。
早くからネット支店を開設したり、リテール業務への大胆な舵切りを行い業績を大幅に伸ばしたりしてきた非常に存在感のある銀行で、当時の金融庁長官からも絶賛されていました。
特にリテール業務の不動産融資では他行が取り組まないようなものをスピード融資を提供したり一部の個人客からも大きな支持を受けます。
そのような中「かぼちゃの馬車」事件を発端として1兆円を超える不適切融資が発覚、一気に経営危機に陥ります。要は今までの積極融資が裏目に出た格好となります。
スルガ銀行の経営悪化にいたった「かぼちゃの馬車」事件
かぼちゃの馬車とは今は破産したスマートデイズという企業が企画展開していた女性用のシェアハウスです。
スマートデイズはこのかぼちゃの馬車というブランドで土地を仕入れシェアハウスを建設し、個人投資家へ売却し、スルガ銀行がシェアハウスを購入した個人投資家に購入資金を融資していました。
スマートデイズは売却したシェアハウスをサブリースで賃借して、エンドテナントである女性に転貸を行うというビジネスモデルでした。
他の情報でも色々書いてあると思うので詳細は省きますが、要はスマートデイズがスルガ銀行行員と実質的に共謀して融資審査に必要な購入者の収入資料や通帳を偽造して不正に融資を受けさせ、しかもサブリースをしているシェアハウスは実際はほとんど稼働しておらず、スマートデイズが破産、焦げ付いた融資が購入者に残ってしまったという事案です。
問題が顕在化したのが2018年です。
スルガ銀行と創業家一族は決別、株式はノジマへ譲渡され資本提携関係に
不適切融資の結果、スルガ銀行は金融庁からは一部業務停止命令を受けました。
また、スルガ銀行は上場企業とは言え実質的には同族経営であったところ第三者調査委員会でも創業者一族であった岡野元会長の責任が一番思いという報告でもあり、金融庁は創業家とスルガ銀行の関係解消を迫りました。
結果、2019年に創業家はスルガ銀行株式を現在の資本提携先であるノジマに譲渡し関係を解消しました。また、数百億にのぼる一族への融資残高が残っていたものも2020年に全額回収したと発表しています。
スルガ銀行とノジマ対立の背景は
スルガ銀行とノジマの対立要因は役員人事案を発端としている様です。
金融庁からの業務改善命令解除の動きを見てより積極的にイニシアティブをとって動きたいノジマと慎重姿勢を崩さない現経営陣との間で意見対立があるみたいです。
ノジマが支配的になる役員人事案を出してきたのに対してスルガ銀行は対抗案をもって6月の株主総会に臨むのでしょうか。
2021.5.28報道ではノジマ社長でスルガ銀行副会長はスルガ銀行の副会長職を辞するということのようです。
改めてノジマとスルガ銀行の資本提携解消は進んでいきそうな雰囲気です。
スルガ銀行とノジマの資本提携解消後はどうなる?
もし人事案がまとまらず、スルガ銀行とノジマの資本提携が解消した場合、どのようなことが起こるのでしょうか?
新たなスルガ銀行株式の譲渡先が必要
もし資本提携が解消となった場合はノジマが保有しているスルガ銀行株式18.5%程度を手放すことになるのですが、上場企業のこれほどまとまった株式をどのように手放すことになるのでしょうか?
やり方としては大きく分けて2つあるかと考えます。
スルガ銀行株式譲渡方法
- 信託を通して市場で売却
- 他の提携先候補へ譲渡
スルガ銀行を持分法適用会社としている株主ノジマはスルガ銀行株式を市場で処分する際はインサイダー取引や大量保有報告などルールに注意して行う必要があります。
実務的には信託を通して少しずつ売却していくことになります。
また、市場で売却する場合は出来高が少ない株式は処分するまで非常に時間がかかる場合があります。
従って、ノジマは保有株式を市場で売却するという選択肢は余り現実的でないと考えます。
ノジマは次の資本提携先へ保有株式を譲渡するというシナリオがメインシナリオになります。
スルガ銀行株式の譲渡先となるのは同業である銀行/金融か、銀商合体を再トライするためまた事業会社か
では譲渡先は誰になるか?候補は同業である銀行やその他金融か、ノジマの様な別業種に分かれます。
金融で頭に浮かぶのは以前名前が挙がったSBI、新生銀行か、その他りそな、有力地銀あたりか
金融機関でスルガ銀行に興味がでそうなのはパッと思いつくのはSBIです。
SBIは「第四のメガバンク」構想のもと、各地の地方銀行と資本提携を進めています。
地銀からすると中々右肩上がりの将来像を描けない中でSBIのサークルに入るというのは他に選択肢がないからだと考えています。
この構想の中でスルガ銀行も当然対象に入るということです。
実際2019年にはノジマと争ってスルガ銀行の支援に前向きであったところ最終的にノジマになったという経緯があります。
もう一先は新生銀行です。こちらも前回に支援候補として名前が挙がった先ですが、結局具体化しませんでした。
問題が完全にクリアになったわけではありませんが、2年間に比べるとスルガ銀行の資産内容はより見極めやすくなったと言えます。
従ってSBIも新生銀行もよりいいポジションで提携を検討することが可能です。
その他でいうと同じく前回名前が挙がったりそな銀行や、有力地銀が考えられますが、確度については中々読めません。
他業種は想像が難しいがリテール特化の銀行と相性がいい小売業か
他業種がスルガ銀行と資本提携を考える場合は必ずシナジー(相乗効果)が見込めることが必要になります。
そう考えるとスルガ銀行のビジネスモデルであるリテール(個人向け)であることを考えるとB to Cの企業になるのだろうという想像がつきます。
次のスルガ銀行支援先が直面する壁は、規制とスルガ銀行へのコントロール方法
まず、スルガ銀行は金融庁管轄であり、支援先がスルガ銀行株式をノジマから譲り受けるためには金融庁のお墨付きが実質的に必要になります。
お金があるからといってすぐにスルガ銀行と提携したり買収してりできるわけでなく、金融庁が首を縦に振る必要があります。
また、ノジマと発生した対立でもわかるとおり、資本提携だけでは当然スルガ銀行をコントロールできるわけでなく、期待した提携結果を得られない可能性があります。
実質はわかりませんが、かぼちゃの馬車問題前は創業家のトップダウンによるコントロールがきき、正しいベクトルに向かっていればとがったいい地銀の地位を維持できた可能性があります。
創業家が去った今経営陣がどこまで提携先のいうことを聞くかというと答えは、どちらが正しいかは別として今のノジマとの対立があります。
個人的にはこれがSBIであれば良くも悪くもある程度のコントロールをきかせられるのかなというイメージがあります。
いずれにしろスルガ銀行株式の同業種外への譲渡はある意味その中途半端さから難航するかもしれません。
イトマン事件と絡んだ住友銀行の闇についてです。日本史上最大級の経済事件をこれほど生々しく読むとぞっとします。
正直申し上げて銀行の歴史は闇です。そしてその闇はみんなが考えている以上に深いです。この本に書かれていることもその闇のほんの一部です。
その闇の中にいた当事者による書籍です。
一部自身行動の正当化の記述が目につきますが間違いなく貴重な資料で読み物としても非常に優秀です。
スルガ銀行の第三者調査委員会報告資料
スルガ銀行の第三者調査委員会がまとめた報告書はある意味どの書籍と比較しても臨場感がある読み物です。
一時期投資家の間でもその内容が話題になっていました。
当時の銀行の闇深さが伝わってくる名作です。長編ですが一度読んでみることをお勧め致します。
特に当時の役員・管理職によるパワハラの記述は鳥肌が立ちました。ウィキペディアにも載っていますが上司に「お前の家族を皆〇しにしてやる」と言われるような労働環境だったようです。
ボリューム的にも一冊の本に匹敵します。しかも当然無料で読めます笑。
https://www.surugabank.co.jp/surugabank/kojin/topics/180907.html