2021年6月16日のプレスリリースで、スターウッドによるインベスコオフィスJリートのTOBが不成立に終わったことが明らかになりました。
ここ数か月当ブログでも状況を追いかけていましたが、一旦の終わりを迎えることになったようです。
かなりの長編となりましたが今までの記事は↓の通りです
スターウッドがインベスコオフィスをTOB【REIT敵対的買収】
インベスコオフィスJリートのスターウッドに対する第一手を発表
インベスコオフィスリートとスターウッドキャピタルそれぞれに動き
インベスコオフィスJリートが正式にTOB反対を表明
インベスコが関連会社によるオフィスリートTOB対抗策を発表
スターウッドキャピタルがインベスコオフィスTOB価格引き上げ
Contents
インベスコオフィス、スターウッドのTOBの不成立は既定路線だった?
スターウッドの一番直近のアクションは以下記事に書いた通り、TOB価格の引上げでした。
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スターウッドがインベスコオフィスTOB価格引上げ【どうなる?】
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上記記事の通り、スターウッドのTOB価格はインベスコグループのTOB価格と同額の22500円でした。
TOBを成立させたければたとえ少額でもインベスコグループの提示価格より高くする必要があるのに、なぜあえてTOB価格を同額にしたのでしょうか?
スターウッドはインベスコオフィスのTOB成立を諦めていた?
TOB価格が同額というのは市場からみるとスターウッドがTOB成立を半ばあきらめていたように見えます。
評価額ベースでいうと稼働率が90%前半まで落ちるので正確な数値ではありませんが、NOIの利回りで4.07%の水準でのTOB価格でした。
全て都心の大型ピカピカオフィスであればゆうにNOI利回りは3%を切りますが、そこまでの立地とクオリティではないポートフォリオでこれ以上つっこむのは経済合理性に合わないので、コストをこれ以上かけず幕引きと判断したのかもしれません。
前の記事でも書きましたが、NOI利回り4%で一口あたり23116円なのでコア不動産である以上、大幅なバリューアップ余地もなくここらが限界と踏んだのかもしれません。
とはいえ2000億円の案件なので、もうちょっと頑張ってTOB価格を引き上げてほしかったところではあります笑。
下記にある通りインベスコグループは価格を22750円に引き上げてTOBを6月18日に開始することを予定しており、これが決定打となり撤退となったのかもしれません。
項目 | 数値 | 備考 |
物件稼働率 | 99.2% | |
物件取得価格合計 | 225,871 | |
取得価格NOI利回り | 5.18% | |
物件鑑定評価 | 274,131 | |
鑑定評価NOI利回り | 4.27% | 取得価格NOI利回りを基に試算 |
マーケット賃料引き直し後NOI | 12,803 | NOI×(111.7%×80%) |
マーケット賃料引き直し後評価額 | 299,790 | |
想定NOI利回り | 4.07% | |
想定NOI利回りベース評価額 | 314,649 |
簿価 | 鑑定評価 | マーケット賃料 | インベスコグループ/スターウッドTOB(NOI4.07%) | NOI利回り4% | |
流動資産 | 23,781 | 23,781 | 23,781 | 23,781 | 23,781 |
有形固定資産 | 230,795 | 274,131 | 299,790 | 314,649 | 320,066 |
その他固定資産 | 1,348 | 1,348 | 1,348 | 1,348 | 1,348 |
総資産 | 255,926 | 299,260 | 324,919 | 339,778 | 345,195 |
有利子負債 | 126,280 | 126,280 | 126,280 | 126,280 | 126,280 |
その他負債 | 15,496 | 15,496 | 15,496 | 15,496 | 15,496 |
純資産 | 114,150 | 157,484 | 183,143 | 198,002 | 203,419 |
発行口数 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 | 8,800,106 |
一口あたりNAV | 12,971 | 17,896 | 20,811 | 22,500 | 23,116 |
スターウッドによるインベスコオフィスTOB劇は一旦終了か
価格が上限に近かったとすれば、スターウッドは一旦インベスコオフィスのTOBを諦めたと理解するのが自然でしょう。
スターウッドはTOBに失敗も、多額の含み益
TOBに失敗したスターウッドですが、約5%程度のインベスコオフィスJリート投資口を保有しています。
大量保有報告書を確認すると、取得単価は14093円である一方、直近の投資口価格は22530円と1.6倍になっており、約37億円の含み益がある計算となります。
もちろん、この持分を処分する過程でどう価格が動くかによりますが、IRR的にはいい投資になったと言えるかもしれません。
インベスコが下記に触れる通りTOBを実施するとなると利益を確定することができますが、果たしてどうなるでしょうか?今度はスターウッドがTOB価格を引上げろというかもしれません笑。
投資口数 | 取得価格(百万円) | 取得単価(円) | 直近投資口価格(円) | 倍率 | 含み益(百万円) |
446,500 | 6,293 | 14,093 | 22,530 | 1.60 | 3,754 |
ただし、スターウッドの事業規模からすると37億円の収益は正直余り大きくないので、ちょっとした小銭稼ぎに終わったということなのかもしれません。
インベスコ関連企業によるTOBは行われるのか?
想定される最後のイベントとしてはインベスコグループによるTOBが行われるかどうかです。
インベスコグループが6月18日にTOB開始を予定
2021年6月11日付のプレスによれば、6⽉18⽇に買付け等の期間26営業⽇として開始することを予定しており、公開買付価格は投資⼝1⼝につき22,750円(スターウッド公開買付けの公開買付価格(投資⼝1⼝につき⾦22,500円)に対して1.11%のプレミアムを加えた価格)とし、買付予定数の下限を発⾏済投資⼝の54.10%とすることを予定しているとのことです。
本来であれば買収防衛の為のTOB予定との理解ですが、スターウッドがTOBを断念したとすれば、TOBを行う必要がなくなります。TOBは中止となるのでしょうか?
本質的にインベスコからすると上場リートが実質的な私募リートに変わり、投資家が個人を含めた投資家から機関投資家に変わっただけで、引き続き不動産を運用することができ、それに対する報酬を得られます。
なので、ビジネス的にはTOBをして非公開化しようがしまいがある意味変わりません。投資家数が減ることで効率が上がるくらいでしょうか。
ただ、ここまでプレスに出しておいてTOBをひっこめるのは法律上大丈夫なのでしょうか?流石に相場操縦にはならないかもしれませんが、ちょっとどこかに引っかかる気がします、、、。
TOBが予定どおり行われるならもう一度問います笑。今回のTOBでインベスコがスターウッドに対して主張していた強圧性で既存投資主への毀損になる話うんぬんはインベスコがスクイーズアウトする意向を示している時点で完全ブーメランでかえってきますよね?
まあそこは茶番なのでもはや誰も気にしないと思いますが笑。
インベスコオフィスTOB失敗による投資口価格への影響は?
スターウッドのTOB失敗を受けて投資口価格はどうなっていくのでしょうか?もちろん未来は誰にも読めません。
価格の行方はインベスコがTOBを行うか否かにかかってくるかと思います。
すなわち、TOBを実行すれば価格は維持、中止すれば価格は少なくとも短期的には下落するのではないでしょうか?自信はありませんが。
本来的な不動産価値からみればTOBが無かったとしてもTOB価格である22500円あたりで推移してもいいような気はなんとなくしますが、やはりイベントが終了すれば短期的にはやれやれ売りが出てくるかもしれません。
また、三鬼商事によるとオフィスビルの空室率も東京は2021年5月で5.9%まで上昇しており、引き続き見通しには注意が必要な状況です。
これがオフィスセクターのセンチメントを冷やし、他の物件種類と比べてもオフィスセクターはアンダーパフォームする可能性があります。
そう考えるとインベスコによるTOBが実施されなければやはり短期的には売り材料が多いのではないでしょうか?
一方で価格向上政策を十分に行わなければまた同じような目に合うとインベスコは学習しているはずなので、今まで以上に投資主対策をしっかり行うでしょうから、それはプラスにみてもいいのではないかと思います。
とりあえず一見あっけない形で幕引きとなりそうではありますが、まだイベントは残っているので見守りたいと思います。
結局TOBは行うようです↓
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インベスコオフィスJリート買収合戦は関係会社による非公開化で決着か【しなくても勝利】
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